LINEヤフーは6月25日、広告サービス品質向上のための審査実績をまとめた2023年度の「広告サービス品質に関する透明性レポート」を公開した。

MSカンパニー 経営企画・事業開発統括本部 トラスト&セーフティ本部長 一条裕仁氏は、同氏が所属するトラスト&セーフティ本部は、同社の広告主とユーザーにとって、安心で健全な広告サービスを提供することを約束する組織であり、「信頼されているプラットフォームとして選ばれ、売上に貢献することを目指している」と説明した。

  • LINEヤフー MSカンパニー 経営企画・事業開発統括本部 トラスト&セーフティ本部長 一条裕仁氏

同社は、Yahoo!広告・LINE広告において、不適切な広告の掲載を防ぐため、広告掲載の申し込み時に開設する「広告アカウント」単位での審査と、「広告素材」単位での審査を実施している。

これらの審査は各サービスの基準に基づき実施、虚偽・誇大広告や詐欺的な広告などの法令に違反する広告のほか、ユーザーに不快感・不安感を与えるような広告などの掲載も制限している。

Yahoo!広告の審査:広告アカウント

Yahoo!広告では、システムおよび人の目で、広告アカウントと広告素材の審査を行っている。2023年度は、7,819件の広告アカウントを非承認にしたという。

アカウント開設時審査による非承認の理由の内訳は、上期に対して、下期は.通常の環境で表示することができないもの、広告表現において過去に重大な違反実績があるものが増えている。

アカウント開設時審査による非承認の理由の内訳は、上期も下期も「アカウントの登録情報から不正な広告出稿の懸念」が圧倒的に多くなっている。

Yahoo!広告の審査:広告素材

一方、Yahoo!広告において、2023年度は約9,600万件の広告素材を非承認としたという。2022年度の約1億3355万件から大きく減っており、2022年度と比較して「最上級表示す・No.1表示」の掲載基準で非承認となる広告の入稿数が減少したという。

下期のディスプレイ広告の広告素材の審査による非承認の理由は、薬用化粧品(医薬部外品)、化粧品が最も多く、上期からも大きく増えている。一条氏によると、薬用化粧品の「使用体験談」の表現を用いて認められた効能効果の範囲を逸脱する広告が増加したという。

具体的には、認められた効能効果であっても、体験談で語られることで、それが「誰にでも効く」「間違いなく効く」「誰でも改善する」という保証表現になるという薬機法の解釈に基づき、非承認にしたという。

また、下期は上期には見られなかった性的な表現などのユーザーに不快感を与えるような表現も増えている。

  • 広告素材審査の非承認の多い事例「ユーザーに不快感を与えるような表現」

  • ディスプレイ広告広告素材の審査による非承認理由内訳

なお、広告品質向上のための取り組みとして、ユーザーの意図しないサイトへ誘導することにより、誤解を与えることを防ぐため、「公式」や「競合」と誤認させユーザーを誘引する広告について、注意事項を公開しているという。

LINE広告の審査:広告アカウント

LINE広告もYahoo!広告と同様に、広告アカウントと広告素材の審査を行っている。一条氏によると、LINE広告審査ガイドラインはYahoo!広告とほぼ同じであり、統合を進めているという。なお、LINE広告の非承認数は、Yahoo!広告とカウント対象や方法が異なる。

2023年度下半期は、1,632件のアカウントを非承認にしたという。アカウント開設時の審査に加え、開設後のパトロールを強化したほか、悪質性の高い広告入稿が見受けられた場合、アカウントの利用停止めが実施された。

LINE広告の審査:広告素材

2023年度下半期は、10万1,218件の広告素材が非承認とされた。約9割がクリエイティブ(主に画像や動画)に起因するものだったという。

クリエイティブでは、「不快な表現」として「局部の強調」、「過度なコンプレックスをあおるような表現」、「アダルト要素の強い表現」などでの非承認が多く見られたとのことだ。

リンク先サイトでは「各種関連諸法規に抵触するおそれのある内容」での非承認が最も多く、内訳は「効能効果を逸脱している表現」「優良誤認・有利誤認表示」「権利侵害のおそれのある表現」などが多かったという。

Yahoo!広告:掲載面・トラフィック審査

Yahoo!広告では、掲載面やトラフィックの審査も行われている。一条氏によると、広告を表示する段階で、対象かどうかを判断し、無効なトラフィック(広告リクエストや広告インプレッション)や、無効なクリックを排除しているという。

それらには、ユーザーに見せかけたボット(自動的にタスクを実行するプログラム)による悪質なインプレッションやクリックなど、広告費を不当に搾取する「アドフラウド(不正広告)」も含まれる。

その結果、Yahoo!広告で2023年度に事前検知した無効クリックなどを広告費に換算すると全体で約302億円相当になるという。この金額は、広告主の費用にならないよう、非課金化の処理が行われている。

なりすまし広告への対応は?

昨今、前澤友作氏がなりすましの広告を無断掲載されて、肖像権などを侵害されたとしてFacebook日本法人を提訴したが、なりすまし詐欺広告の被害が拡大している。こうした背景から、説明会でもなりすまし広告に関する質問が相次いだ。

一条氏は、「広告領域において、なりすましかどうかを100%突き止めることは難しい。LINEの友達登録に誘導する広告など、詐欺広告につながる可能性が高い特定のカテゴリーについては、対策を強化している」と説明した。

また、MSカンパニー 経営企画・事業開発統括本部 トラスト&セーフティ本部 ポリシー室長 中村茜氏は、「なりすましかどうかを第三者が判断することは難しいので、総合的に判断している。その基準は、不正者に情報を与える恐れがあるので公開していない。LINEの個人アカウントへの登録や未認証のアカウントに誘導することを禁止していることは、基準として公開している」と述べた。

  • LINEヤフー MSカンパニー 経営企画・事業開発統括本部 トラスト&セーフティ本部 ポリシー室長 中村茜氏