【自主回収乗り越え高成長の要因は?】ベースフード 太田里沙氏「全チャネル成長で売上50.9%増」

完全栄養食ブランド「BASE FOOD(ベースフード)」を運営するベースフードの成長が続いている。2024年2月期の売上高は、前期比50.9%増の148億7000万円だった。増収要因について、太田里沙マーケティング/営業統括マネージャーは「EC、卸と全てのチャネルで成長できたことが奏功した」と振り返る。太田マネージャーに前期の振り返りと、自主回収問題、今期の施策の詳細などについて聞いた。

前期を振り返ると堅実に全てのチャネルで成長できた。卸の小売店の取引先数が増えると、消費者の裾野も広がる。小売店で当社の商品を購入して、味に納得して、「他にどのような商品があるのかな」とECサイトを訪れてくれる。

一方、ECサイトで購入して、「こんなに食べきれない」と思った人や、「今日のランチ用に出勤前に買っておこう」と思って、小売店で購入する。オンラインとオフラインを行き来する「OMO」のような仕組みを構築できたと思っている。

前期で当社にとって大きかった問題でいうと、それはやはり商品に不備が発生し、一部自主回収を行ったことだ。2023年10月に、委託先の製造工場で製造された一部製品にカビが発生してしまった。

商品に不備が発生した後、2023年9―11月期の自社EC、他社EC売上高は減少傾向にあったが、現在は復調している。復調できた要因としては、主に①品質強化に向けた、早急な対応 ②顧客への誠意ある説明 ③食の安心・安全への取り組みをページとして掲載したこと――などが良かったと思っている。

定期購入していただいている顧客には、「メール」「LINE」「同梱紙」などで説明した。当社の公式ホームページには、食の安全性に関する取り組みを掲載している。もちろん今回の商品不備の改善策のほか、それ以外でもより品質の高い製品を提供するための考え方や各種取り組みを掲載し、これまで以上に安心・安全については徹底している。

<顧客との距離感が奏功>

商品不良による自主回収があったにも関わらず、売り上げを維持、向上させることができた理由としては、個人的には今まできちんと近い距離で顧客と関係性を構築できていたからではないかと感じている。

当社は「BASE FOOD Labo(ベースフードラボ)」という顧客との共創の場であるコミュニティーがある。「BASE FOOD Labo」は「BASE FOOD」継続コース会員向けのオンラインコミュニティーだ。そこでは会員が商品を使ったアレンジレシピや、新商品のアイデア投稿など、活発な意見交換が行われている。

そこで投稿された声に関しては、一つ一つヒアリングし、新商品の開発や改善に生かしている。今回の自主回収問題は”会社の危機”だったが、既存顧客からは「がんばってね」との応援の声もいただいた。過去の当社の顧客との向き合い方が、既存顧客に理解され、問題が起きても離れることなく、応援してもらえたのだろう。

今期は冷凍パスタやパンケーキミックス、即席タイプの焼きそばなどを販売しており、今後もパンの新商品とともに、パン以外の新商品を発売する。

チャネルの拡充も行っていきたい。2023年12月―2024年2月期において、取り扱い店舗数は5万1091店にまで拡大した。コンビニへの配荷率は82.7%となっており、今後はドラッグストアやスーパーマーケットなどへの展開に注力していく。

【記者の目】

ベースフードは食品EC業界の中でも高成長を続けている。好調な要因の1つに、オフライン展開が関係している。冷凍弁当を販売するEC事業者に取材したとき、「コンビニへの卸もやりたいが、価格が合わない」と言っていた。

確かに1食700円程度の冷凍弁当をコンビニで買うかといたら懐疑的だ。すでにコンビニには同価格帯の商品があるからだ。コンビニ限定の少し安い商品を開発するのにも手間がかかる。その点、ベースフードの商品は、比較的お手頃価格で、コンビニで取り扱っていないジャンルの商材だったと思う。

これから食品で卸展開を考えている企業は、コンビニで取り扱いがなく、コストがかからない商品を見付けることが重要だろう。