DigiKeyは6月20日、オンライン・メディア・ブリーフィングを開催し、同社のDave Doherty社長がグローバルおよび日本市場に対する事業戦略などについての説明を行った。

現在、地球を取り巻くさまざまな問題が世界規模で議論されているが、その解決にはテクノロジーの活用が重要という潮流ができている。同社は「we get technical」を掲げ、そうしたさまざまなテクノロジーが関わる分野の人々が必要とする情報や製品を届けるという意思のもと、サービスの提供を推進してきており、ネット商社である同社が扱う半導体/電子部品メーカー、取り扱い点数は増加し続けている。DigiKeyとしても、「より多くの人に各社の製品を提供する」(Doherty氏)ことを目指し、取り扱いメーカーの開拓を推進ならびに協力関係の強化を推進してきたとする。

こうして多くの半導体/電子部品の取り扱いが可能となったことで、四肢が麻痺している人であっても、自分の意思でコンピュータの操作を可能とするソリューションの構築であったり、日本のインターステラテクノロジズが自社ロケットの開発・製造する際にDigiKeyから製品を購入するなど、グローバルでのものづくりをする人・メーカーを支援。現在、同社から半導体/電子部品の購入するメーカー数は95万社以上に達しているという。

  • DigiKeyから半導体/電子部品を購入して開発されたソリューションの一例

    DigiKeyから半導体/電子部品を購入して開発されたソリューションの一例 (資料提供:DigiKey、以下すべて同様)

  • 顧客の数は右肩あがりに増加
  • 顧客の数は右肩あがりに増加
  • コロナ禍でオンライン調達が世界的に普及したこともあり、同社から購入する顧客の数も右肩あがりに増加。2023年は95万社以上が同社から何らかの製品を購入したという

サプライヤと顧客の両方に寄り添うことで事業規模を拡大

2024年現在のテクノロジー市場は2023年より続く世界的なインフレやエネルギー価格の高騰などに伴う消費者の購買意欲の減退などの影響からビジネスサイクルとしてはダウンターンから底を打った付近と見られており、同社としても、「ビジネスの波はあるが、2006年以降の四半期ごとの購入者に対する平均請求額は全般的に上昇傾向にある」とし、直近数四半期は景気の影響を受けてはいるものの、顧客数、出荷点数ともに伸長しており、世界的な経済の回復に併せて売り上げも伸びるとの見方を示している。

  • 2006年以降の四半期別平均請求額

    2006年以降の四半期別平均請求額。波はあるものの総じて増加傾向にある

中でも市場のけん引役は半導体で、2020年代は2023-2024年に新型コロナ特需の揺り戻しがあるものの、その後、順調に成長が続くことが期待されている。

こうした市場環境を踏まえ、同社の戦略としては製品は半導体/電子部品メーカーから調達するが、いかにロジスティクス含めて、そうしたパートナーと良好な関係を構築するかが重要であることを強調。サプライヤ各社とカスタマの間で生じるさまざまな課題を解決し、カスタマエクスペリエンスの向上に寄与することを目標に掲げ、新製品のいち早い取り扱いの開始であったり、新規顧客の開拓、eコマース機能の向上、マーケットプレイスを始めとするサプライヤに向けたサービスの拡充などを推進。「現在2900社を超す高い製品品質を提供するサプライヤの製品を扱っており、その在庫点数は430万点以上。DigiKeyほど広範囲にIT/テクノロジー領域をカバーしている企業はなかなかいない」と同氏は自社の強みを語っている。

同社は、米国のミネソタ州シーフリバーフォールズに拠点を構えており、世界中から注文を受けつけ、北中南米地域には24時間以内、EMEAには48時間以内、APACには72時間以内の配送を掲げている。同社は最近、拠点内に新たな倉庫を建設。この新倉庫の稼働により取り扱い点数は2.5-3倍に引き上げられる見込みだという。「シーフリバーフォールズは人口8000人ほどの町で、必然的に倉庫の自動化を推進する必要がある。新たな倉庫では、これまで1時間あたり25件のピックであったのが、1時間あたり325件のピックが可能なロボットを導入。リールのカットなどについても高精度な装置を導入するなど、高効率化を図っている」(同)と、さらなる顧客の利便性向上に向けた取り組みを推進していることを強調する。

  • DigiKeyの倉庫の様子
  • DigiKeyの倉庫の様子
  • ミネソタ州シーフリバーフォールズあるDigiKeyの倉庫の様子。現在は通常のサプライヤから仕入れて、顧客の購入に応じて出庫するといった事業のほか、倉庫をサプライヤに貸して在庫を預かり、注文が入ったらその在庫から必要数を出庫するロジスティクスサービスなども展開しているという (提供:DigiKey)

2024年のAPACにおける注力地域は日本とインド

日本は同社にとって、米国およびカナダ以外に初めて進出した海外市場であり、その第一歩として松下電器産業(現パナソニック)と取引を開始以降、取引企業数、購入者ともに数を増やしてきており、2023年の売上高は約9400万ドル、国別で売上高を見ると7位にランクインするという。また、同社のeコマースサイトの日本語対応も進んでいることから、売上高の97%がオンライン経由での購入で、90%がドル建てではなく円建てでの取引になっているともするほか、同社の日本向けWebサイトの月間ページビュー数は約350万、月間訪問者数は18万8000人としている。

「長期的成長基調を見据えて、短期的な変動にとらわれることなく、着実な成長を達成していきたい」と同氏は日本市場に対するビジネスの方向性を示すが、それは日本がアジア・太平洋地域(APAC)における同社の橋頭保とも言える市場であるため。日本語という特異な環境ではあるものの、「日本の顧客は数量に厳しく、出荷個数が注文よりも多くても少なくても問題になる。そうした良い顧客がいる市場であり、そうした市場でどのようなサービスが受け入れられていくか、APAC全体の顧客に先んじたトライアルを行う地域という意味合いもあり、アジアのパイロットラインといえる」と、評価の高い市場であり、今後もその重要性は変わらないとする。

またAPACとしては、成長著しいインドも注目市場とするが、ロジスティクスに難がある市場であり、輸入手続きなども煩雑であることから、そうした部分の効率化を進めることで攻略を進めていくとする方針を示している。

なお同社では、日本市場においては製造業が強い産業であることを踏まえ、ロボットを含めたオートメーション分野が成長が期待できる分野との見方を示しており、展示会なども含め、積極的に当該分野へのアプローチを図っていくとしている。