小誌では以前、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)らが開発し展開している、デジタルヒューマン「CONN(コン)」を紹介した。彼女はNTT Comのカタリストの一人として、「個性を持つ唯一無二のデジタルヒューマン」をコンセプトに開発された。
CONNはNTT Comの他に、東映ツークン研究所、NTT人間情報研究所、NTT QONOQ(コノキュー)などが開発に関わっている。発話する言語だけでなく、表情や振る舞いもリアルタイムで生成しており、自然な対話を可能としている。
これまでNTT Comを中心に、CONNをはじめとするデジタルヒューマンを活用したサービスが検討されてきたが、少しずつ社会実装を見据えたユースケースも創出され始めている。同社はこのほど、デジタルヒューマンを活用した顧客対応の事例についてメディア向けに公開した。そこで披露されたデモの様子をお届けしよう。
薬局での商品提案
まずは、富士薬品との共創事例だ。薬局の店舗において、デジタルヒューマンを用いた顧客対応を想定したデモが披露された。
多言語対応
「中国語で自己紹介してください」とCONNに話しかけると、中国語で挨拶してくれる。最後には名刺を差し出すようなジェスチャーも見せる。
NTT Com CONNデモンストレーション(多言語対応)
顧客に合わせた商品案内
「目薬を買いたい」とCONNに話しかけると、CONNは症状について問い返す。こうした自然な対話に基づいて、適切と思われる商品をCONNが案内する。ここには、生成AIがもっともらしい嘘をつくハルシネーションを防ぐ工夫も施されているとのことだ。
NTT Com CONNデモンストレーション(顧客に合わせた商品案内)
専門家への引き継ぎ
もちろん、薬局のような専門知識が求められる接客の場面においては、デジタルヒューマンがすべての要望に回答できるわけではない。そのような場合は、薬剤師など専門家へエスカレーションする機能を備える。二次元コードなどで案内を促す機能も持つ。
NTT Com CONNデモンストレーション(専門家への引き継ぎ)
レコメンデーション
デジタルヒューマンによる接客では、顧客の要望や購買履歴を参照して、購買意欲を引き出すレコメンデーションにつなげることもできるという。クーポンや追加の関連商品を案内するなど、売り上げの向上につながる接客も可能だ。
NTT Com CONNデモンストレーション(レコメンデーション)
オンラインでの保険相談
NTT Comは太陽生命と共に、デジタルヒューマンを用いた保険相談のソリューションを開発した。保険契約におけるヒアリングから契約手続きまでの、顧客対応プロセスを支援するという。
保険相談の窓口業務にデジタルヒューマンを用いることで、夜間や休日など従来は難しかった時間の対応も可能となり、従業員不足を解消するだけでなく、顧客満足度の向上も期待できるという。
CONNに「子供が生まれるので、保険を見直したい」と話しかけると、単に保険を案内するだけではなく「お子様の誕生、おめでとうございます」のように、人間らしい一言を添えてくれる。
NTT Com CONNデモンストレーション(保険相談)
今回披露されたデモのように、特に接客をはじめとする顧客対応などでデジタルヒューマンは活躍の場が増えそうだ。生成AIの高度化によりますます自然な対話や的確な情報提供も可能になると考えられる。また、受け答えのレスポンス速度も向上するだろう。
街中の薬局や保険相談の窓口で、CONNに紹介してもらった商品を購入する日は予想以上に近いのかもしれない。身近な店舗での体験がAIによってどのように変化するのか、楽しみだ。