以前は、動画といえばテレビで見るものだったが、今やPC、スマートフォン、タブレットなど、さまざまなデバイスで見られている。そうした風潮を受け、テレビ局もインターネット上でコンテンツを配信するようになっている。日本テレビ放送網(以下、日本テレビ)もその一社だ。
そして、テレビ番組の人気ぶりを示す指標に視聴率があるが、視聴率ではインターネットコンテンツのアクセス状況を測定することはできない。
そこで、日本テレビではTableauを活用して、インターネットコンテンツの視聴状況を可視化するなど、社内の誰もがデータ分析が行える環境を整備している。
今回、日本テレビにおけるデータ活用について、DX推進局 データ戦略部 専門副部長 川越五郎氏とDX推進局 データ戦略部 副主任 辻理奈氏にうかがった。
未着手だったインターネットコンテンツ分析の仕組みを構築
日本テレビでは、DX推進局 データ戦略部がデータ分析にまつわる業務に取り組んでいる。DX推進局は社内に点在していたITエンジニアを集約して、人材の流動性を高めることを目的として、2023年6月に設立された。データ戦略部には20名弱が所属している。
DX推進局 データ戦略部 専門副部長を務める川越五郎氏は、インターネットコンテンツの配信に関わりたくて同社に入社したが、「TVer」や「Hulu」といったコンテンツのインターネット配信の仕組みを構築したことで、目的を達成。次のステップとして、インターネットコンテンツがどう視聴されているかを分析する仕組みを構築したいと考え、データ戦略部の前身となるチームを立ち上げた。
「視聴率の分析は深く行われていましたが、インターネットコンテンツの配信は新しい事業であるため、データの可視化が未着手でした。だから、その可視化を始めたかった」と、川越氏は話す。
テレビ番組の視聴率はサンプリングデータから算出するが、インターネットコンテンツのデータは実数がとれるなど、データの特性が異なる。
そんなこともあり、視聴率を分析する特化したシステムをカスタマイズする選択肢もあったが、新しい取り組みとして、Tableauを使って可視化することにしたという。
「セルフサービスBI」を目指すも方向転換
川越氏は、データ活用の方向性として、あらゆる部署の人がダッシュボードを見られる環境、いわゆる「セルフサービスBI」を実現したかったと語る。
その場合、各部門が所有しているExcelなどの独自のデータを使うことが前提となることから、「クライアントソフトを持っているTableauが魅力でした」と川越氏はいう。
日本テレビでは2018年にTableauの利用をスタートし、2022年ごろからその本格活用が進んだ。当時、視聴率に関するデータは蓄積されていたが、それ以外のデータはなかったことから、配信系のデータ、SNSのデータ、社内のデータなどを取得することも並行して進めていた。
当初の目標だった「セルフサービスBI」は、ユーザーが日々の業務で忙しく、新しいことに取り組むのが難しい状況だったことから、方針を変更。ユーザーではなく、データ戦略部がダッシュボードを作り上げて使ってもらうことにした。
機動性、表現力が魅力のTableau
現在、ダッシュボードの開発は各部門とデータ戦略部でディスカッションしながら進めている。DX推進局 データ戦略部 副主任 辻理奈氏は、ユーザー部門との共同作業について、次のように話す。
「Tableauの利用により、データ基盤さえ整えば、プロトタイプを作ってそれを見せながら議論ができるようになります。ダッシュボードを使う人はエンジニアではないので、プロトタイプによって『データを使う世界観』を示すことで、データの活用のイメージが湧いてこんなことはできないかという話が広がっていきます。Tableauには、機動力と表現力の高さがあります」
川越氏も、「Tableauで作成したダッシュボードは表現力が豊かです。ユーザー部門とのミーティングでは、ディスカッションしながらダッシュボードを作りこんでいきます。そのため、ダッシュボードが出来上がった時に、『こうじゃなかった』ということがなくなります」と話す。
さらに、辻氏は「基本的にデータ基盤は整備していますが、Tableauならデータベースが整っていなくても、Excelのデータからダッシュボードを作れます。データの整備を待つ必要がなく、サンプルデータでダッシュボードを作ってみるといったことも可能です」と、Tableauの柔軟性の高さを気に入っている様子だった。