中堅・中小企業のDXコンサルティングを中心に事業展開する経営コンサルティンググループ、船井総研ホールディングス。2024年4月に移転した同社の新オフィスでは、あらゆるところにZoomのソリューションを導入しているという。

船井総研ホールディングスはなぜ、Zoomソリューションの全面導入を決めたのか。その結果、何が得られたのか。

4月12日に開催された「Zoom Experience Day Spring」に、船井総研ホールディングス グループIT推進部(兼)コーポレートストラテジー部 シニアマネージャー 石田朝希氏、船井総合研究所 DX支援本部 DXエンジニアリング部 ディレクター 神徳あや氏が登壇。同社におけるZoomソリューション導入の背景と活用の実態について語った。

Zoomソリューションをフル活用した新オフィス

船井総研ホールディングスは今年4月、本社オフィスを丸の内から東京ミッドタウン八重洲(東京都 中央区)に移転した。新オフィスでは、Zoomのテクノロジーをフル活用したという。

例えば、全ての会議室に常設タイプのビデオ会議システム「Zoom Rooms」を設置した。同システムは、会議室に個人のPCを持ち込まなくてもオンライン会議に参加できるようになるというもの。同社はこのZoom Roomsを活用し、入社式や新入社員研修なども行っている。

さらに固定電話は全てクラウド型電話サービス「Zoom Phone」に切り替えを完了しており、会議室の予約にはZoom WorkspaceのReservation機能を使うという徹底ぶりだ。もちろん、Web会議ツール「Zoom Meetings」やウェビナーツール「Zoom Webinars」も導入しており、常時接続によるリモートオフィス、研究会、社員表彰式、経営方針発表会など、あらゆる場面で活用しているという。

「当社では約1,000人がZoomの有料ライセンスを持っており、Web会議を年間約20万本、ウェビナーは3,000本以上行っています。この規模の会社にしては、かなりZoomを使用しているのではないかと思います」(石田氏)

  • 石田朝希氏

    船井総研ホールディングス グループIT推進部(兼)コーポレートストラテジー部 シニアマネージャー石田朝希氏

新オフィスには、その他にも大小さまざまなZoomソリューションが導入されている。

Zoom Workspaceを導入した個別ミーティングブースもその一つだ。全53室のブースは防音になっており、高速のZoom専用ネットワーク回線を用意。ブース内はソファ席なので、長時間のミーティングでも快適に過ごせるという。

また、同社内には来客用の会議室やセミナー用の部屋、採用イベント用の部屋などがあるが、以前は部屋ごとに別々のシステムを入れていたため、連携できずトラブルが頻発していた。現在はZoomソリューションで統一したことでそうしたトラブルがなくなり、Web会議やイベントのスムーズな運営が可能になったとのことだ。

加えて、石田氏が「感動した」と話すのがZoomの文字起こし機能である。顧客との打ち合わせ内容を議事録として納品したり、オウンドメディアの動画インタビューの内容を字幕化したりといった作業が文字起こし機能により大幅に効率化された。もともとは若手コンサルタントが担当していた業務だったが、現在は浮いた時間を別の業務にあてられるようになったという。

なぜ、Zoomを全面導入したのか?

あらゆるZoomソリューションを活用する船井総研ホールディングスだが、なぜ同社はこれほどまでにZoomに振り切ったオフィス構築を行ったのか。

そもそも、同社とZoom社の関係は約9年ほど前からあったのだという。

「船井総研ホールディングスとZoomとの関係は2015年頃から始まりました。当時はまだZoomではなく、P音声会議システムというソリューションを使って、東京や大阪、上海といった各拠点をつないでいました。さらに2017年からは、Zoom Webinarを導入し、トライアル的に使用してきました。2019年に米国のZoom社を視察する機会があり、創業者の講演などを聞いて、もっとZoomを活用するに至ったのです」(石田氏)

つまり、同社がZoomを全面的に導入したのは、Zoomの経営者の考え方やサービスとしての根本的なフィロソフィーに惚れ込んだからであり、「(自分たちの顧客である)中小企業にもメリットがあるだろうと思えたからこそ導入した」(石田氏)というわけだ。

導入で起きた「変化」- AI利用に対する意識への影響も

導入によって、営業活動や働き方にも変化があったという。

「私も以前はコンサルティング担当だったのですが、お客さまとの接点をZoomで増やすことができ、こまめなフォローを入れることでより確実な成果につなげられるようになりました。また、従来は日帰り出張を繰り返すようなコンサルティングスタイルでしたが、Zoomを導入したことで『オンラインで短時間コンサルティングして、通常よりも低額なフィーをいただく』といったプチ・コンサルティング商品が生まれ、コンサルタントとしての働き方改革も実現できたと感じています」(石田氏)

また、船井総研ホールディングスは主に中堅・中小企業向けのDXコンサルティングを行っているが、そうした顧客に向けて同社が「お手本」となるのにもZoomは役立っているという。なぜなら、中堅・中小企業は大企業と違ってデジタルツールをなかなか使いこなせないケースも多いからだ。その場合はまず、導入しやすいZoomをDXの入口として提案することが多く、船井総研ホールディングス自身が使いこなしているという点が良いきっかけになるのだという。

Zoomの導入は同社のテクノロジーに対する意識にも影響を与えた。

「もともと当社はAIの利用に懐疑的でしたが、まずは使うことで経験値を積むべきだという考え方に変わり、今年から社内でのAI利用を解禁しました。(会話型AI機能の)『Zoom Revenue Accelerator』をZoom Phoneと組み合わせて使ってみたいですし、その結果についてはZoomにフィードバックしていきたいと考えています」(石田氏)

Zoom Phoneを活用した新たなサービスを開発

船井総研ホールディングスは現在、業務アプリ構築サービス「kintone(キントーン)」と顧客管理・営業支援ツール「ZohoCRM」を使ったCRMを顧客向けに提供しているが、そこに加わったのがZoom Phoneを活用した「Click to Call」サービスだ。kintoneにはもともと電話番号を入力してZoomに接続する機能はあるが、「我々の開発したサービスなら、そのひと手間をなくしてボタンを押すだけで接続できる」と話すのは同機能の開発を担当する神徳氏だ。

  • 神徳あや氏

    船井総合研究所 DX支援本部 DXエンジニアリング部 ディレクター 神徳あや氏

「例えばセールス部門なら、電話の内容は今までExcelやスプレッドシートに本人が入力したものを信じるしかなかったのですが、Zoom PhoneとCRMの組み合わせなら元の会話データで確認できます。また、カスタマーサポート部門なら、話した内容を手入力でCRMに記録する必要がなくなるため、もっとコアな業務にリソースを割けるようになります。人によっては必要ないと判断して省いてしまっていた内容が抜けることもなくなるでしょう」(神徳氏)

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新オフィスへの移転に伴い、Zoomソリューションのフル活用に踏み切った船井総研ホールディングス。オフィスが“変わった”ことは、日々の業務の効率化だけではなく、働き方改革や新たなサービス提供にも結び付いたようだ。コロナ禍を経てオフィスの在り方が見直される今、真にオフィスに必要なものとは何なのか。今一度、向き合う良い機会になったのではないだろうか。