揺れるJR東海のリニア新幹線 開業時期を延期した矢先の知事辞任

早くても開業は2034年

 JR東海のリニア中央新幹線が当初掲げていた2027年の開業を断念せざるを得なくなった。開業の遅れは静岡工区の遅れだ。工事契約の締結から6年4カ月が経過した今も、静岡工区についてトンネル掘削工事に着手できていない。

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 静岡工区は全長約285.6キロのうちの僅か約8.9キロ。ただ、全区間が南アルプスの地中深くを掘り進める山岳トンネルになるため、「工事は10年はかかる」(関係者)。そのためリニア開業は早くても34年になる。

 背景には静岡県知事の川勝平太氏が工事に伴う大井川の水資源や南アルプスの生態系への影響、さらには工事で出る土砂の問題などを危惧して工事の着工を認めていなかったことがある。ところがJR東海が開業時期を断念した矢先、その川勝氏が自らの失言の責任を取り辞任を決断。

「何を言い出すかわからない。動向を注視していく」。JR東海関係者は同氏の電撃辞任に驚きつつ、慎重な姿勢を崩さない。そもそも両者は最初から〝ボタンの掛け違い〟だった。実際、JR東海の関係者も「初動がまずかった」と吐露する。

 同社が17年に工事着工を県側に求めた際、水資源への影響を回避するため、必要に応じてトンネル湧水をポンプアップする対策などを報告。それに対し県側は「(トンネル湧水の)全量を恒久的かつ確実に大井川に戻すことの早期表明」を求めたが、JR東海側は県側を納得させられる材料を提供できなかった。

 一方の川勝氏も主張を二転三転させてきた。国の有識者会議が「JR東海の進め方は適切である」とお墨付きを与えたが、川勝氏は「十分な議論がなされないまま取りまとめられようとしている」と不快感を示した。

 また、県外に流出した水を大井川に戻す「田代ダム案」に対しても「尊重したい」と述べたが、「まだ不確定な部分もあり、実現性や技術面を県の専門部会で確認していきたい」とした。議論は平行線を辿ったままだ。

 その状況下、川勝氏の退陣はJR東海にとって「追い風になる」と見る関係者は多い。沿線自治体から期待の声が上がるリニア。次の知事は総事業費7兆円プロジェクトの鍵を握る。