Adobeが生成AI戦略を急ピッチで進めている。2023年にクリエイター向け生成AI「Adobe Firefly」を発表、今年はマーケティングでの生成AI活用を全面的に支援する「Adobe GenStudio」が秋に登場する予定だ。
同社が3月26日~28日、米ラスベガスで開催した年次イベント「Adobe Summit 2024」で、同社幹部がGenStudioの狙いについて説明した。
Adobe Summitの目玉、「Adobe GenStudio」
Adobe GenStudioは今年のSummitの目玉となった。構想については2023年秋に明らかにしていたものの、本イベントでベールを脱いだ格好となる。
GenStudioは、デジタルマーケティングプラとフォームの「Adobe Experience Cloud」やFireflyなどのAdobe製品と深く統合されており、アイディエーションから結果測定までエンドツーエンドのサイクル全体を通じて、それぞれの製品に対して単一のインタフェースを提供するものだ。
マーケティング担当は、マーケティングブリーフに沿ったコンテンツを生成し、アクティベーションし、結果(パフォーマンス)を測定できる。さらには、良い成果を生んでいるコンテンツのバリエーションを作成したり、うまくいっていないコンテンツの配信を停止したりすることなどもできる。ブランドのガイドラインを満たしているのかをチェックする仕組みも備えている。
これらの作業を、単一のUIによち生成AI主導で行うことができるという。AdobeでGenStudioプロダクトマーケティング シニアディレクターを務めるDon Bennion氏は「これらの製品を置き換えるものではない」と位置付けを説明する。
なぜ、AdobeはGenStudioを提供するのか?
Bennion氏は、GenStudioを提供する背景として、大きく3つを挙げた。1つ目は、キャンペーンのプランニングから展開までに要する時間だ。
2つ目はパーソナライゼーションをいかにスケールさせるかについて。同氏は「新しいソーシャルメディアの登場など、チャネルが増えており、顧客のパーソナライズへの期待も高い。タイムリーに顧客とやり取りするためには、スケールのあるパーソナライズが求められている」と話す。
3つ目は、同程度の予算でこれまで以上のコンテンツを生成しなければならないという多くの企業が抱える現状だ。Bennion氏「これまでのやり方を変えなければならない。GenStudioにより、生成AI主導のプロセスを単一のインタフェースで行うことができる」という。
こうしたことは、既存のやり方を変えることでもある。これについて、Bennion氏は「すべての変革的な技術で言えることだが、技術だけを変えるのでは不十分だ」と強調する。
生成AIを最大活用しながらマーケティングを効率化するためには、技術、そしてやり方の両方で変えていく必要があるとの見立てだ。
また、同氏は「マーケターが生成AIを使って作成するようになると、ブランドのガイドラインに沿っているか、安全かを確認するプロセスが必要になる。企業が生成AIを活用するためには、チェンジマネジメントは不可避だ」と力を込める。
今後、Adobe GenStudioは2024年第3四半期に提供の開始を予定している。なお、Adobeの製品を導入していないユーザー向けに軽量版を提供する計画もあるようだ。