物質・材料研究機構(NIMS)は3月22日、100mm離れていても対象物とセンサ間に発生する電界の干渉を感知して作動する仕組みにより、対象物と非接触でも検知することが可能なタッチセンサを、中国・青島大学などの中韓の研究者らが開発したことを発表した。

同成果は、中国・青島大のXingling Li氏らの研究チームによるもの。詳細は、NIMSが刊行する材料科学に関する全般を扱う学術誌「Science and Technology of Advanced Materials」に掲載された。

  • 今回の技術による三次元指認識と携帯電話へのデータ送信のイメージ

    今回の技術による三次元指認識と携帯電話へのデータ送信のイメージ(出所:NIMSプレスリリース)

皮膚はバリアや発汗などの機能を担うと同時に、触覚・痛覚・温覚・冷覚といった感覚を備えた繊細なセンサでもある。こうした生物の持つ機能を模倣したロボットを実現するため、外部刺激を瞬時に検知し、動作につなげることを可能にする電子皮膚の研究開発が進められている。電子皮膚であれば、ロボットなどの機械が物体の形状を触れて分析をしたり、必要に応じて物体を破損させたりすることなく正確な力で持ち上げたり、操作したりすることもできるようになる。

物体の接触を認識できるタッチセンサは、すでにスマートフォンなどでも馴染みがあるが、現行のものは大半がタッチすることで接触層に物理的な変形が生じ、その結果生じた電気容量の変化を検知することでタッチされたことを把握する仕組みだ。しかし、たとえばスマートフォンでも画面中央と外縁部など、触る位置によって感度が変わることがあり、結果としてこの種のセンサのボトルネックとなっているという。そこで研究チームは今回、より高い感度と汎用性を実現するために、有用な電気特性を持つ新しい複合フィルムを開発することにしたとする。

今回開発された複合材料は、ポリジメチルシロキサンに少量の黒鉛状の窒化炭素を添加したもので、特殊な三次元印刷法の「ディスペンス印刷」によって製造・加工が可能であり、高粘度インクを用いた印刷の構造やパターンを細かく制御することができるという。なお、事前の予想では高い誘電率(電界に対する反応性の指標)が予想されたが、それに反して低い誘電率が示され、その方が電界に対してより感度の高いセンサを作るのに理想的であることを示す結果となったとのこと。

この複合材料を利用し、物体の表面から5~100mm離れた位置で物体を感知できるグリッドが作製され、研究者の指を検知対象として、グリッドの近くまで接近させながら、実際には接触させずにグリッドの能力をテストすることにしたという。その結果、その性能は、感度、反応の速さ、繰り返しの使用における堅牢な安定性という点で、傑出していることが確認されたとした。

今回の複合材料は、ウェアラブル製品や電子皮膚の分野における新たな可能性を開くものとし、またウェアラブル技術に必要な物理的に柔軟なセンサの製造にも適しているとした。これらは、医療モニタリングやIoTにおいて、より一般的な用途に応用される可能性があるとしている。また、センシング・グリッドをプリント基板に組み込むことで、収集したデータを、携帯電話で広く使われている4Gネットワーク経由で送信することも実現された。

研究チームは現在、大量生産に適した技術を開発するため、今回の技術を改良する計画だという。また、単に形状や動きを検出するだけでなく、さらなる可能性を追求したいとしている。たとえば、センサアレイにおいて異なるユニットが順次応答する能力を持つことで、ジェスチャー認識のような人間とコンピュータのインタラクションを実現する可能性を提供できるとした。また、接触・非接触システムにおけるセンサの性能は、障害物回避や歩行モニタリングといった人間の動体検知に対する可能性を示唆しており、インテリジェント医療への応用も期待できるとしている。