東北大学と日本工営は3月21日、地震被害精度のさらなる高度化と、技術実装を通じた防災事業への展開を目的として、地震計観測網を活用し、地震発生時に都市全体の建物被害を瞬時に予測できる技術を開発したことを発表した。

同成果は、東北大 災害科学国際研究所 計算安全工学研究分野の寺田賢二郎教授と日本工営 中央研究所の共同研究チームによるもの。

現在、関東から四国・九州までの太平洋沿岸地域において地震そのものと、その影響で発生する危険性がある津波により甚大な被害がもたらされるとして、南海トラフ地震が警戒されているほか、首都圏については、首都直下地震の発生も懸念されており、このいずれも今後約30年以内に70%ほどの確率で発生すると推測されている。

日本は、列島の構造上、地震が発生しやすい地域であり、歴史を振り返えるまでもなく各地で大小さまざまな地震やそれに伴う津波などを経験してきた。こうした経験を踏まえ、地震に対するさまざまな対策や規制が行われてきた。学校の校舎や役所などの耐震補強工事なども各所で行われているが、大型地震を想定して都市の作りそのものに手を加えることは、コストや手間、そして住民の理解なども含めて非常に時間もかかることになるため実際に行うことは難しい状況である。

仮に都市そのものに手を加えることができたとしても、入念なシミュレーションなどを実施して実際に効果があることを検証する必要がある。そこで研究チームは今回、都市の建造物すべてを扱うシミュレーションにより、都市全体の建造物への被害を予測する技術を開発することにしたという。

実際に開発された技術では、災害発生前に対象となる都市全体に関する地震シミュレーションを実施することとなる。断層から地中を通って地表面まで到達する地震動の伝播と、地表面の振動による、すべての建造物の揺れをシミュレーションによって計算が行われ、被害の程度を数値化。さらに、その計算を多数のケースにおいて実施し、その結果をデータ科学技術で分析し、都市の建物被害の空間特性を把握しておくことで、実際に地震が発生した際、この事前に把握された空間特性と、既存の観測網から得られた少数の建物の振動データを組み合わせることで都市全体の建物被害を瞬時に予測することが可能となるという。

地震の発生前および発生後に都市全体の被害状況が予測できれば、さまざまな災害パターンに対応した都市の防災および発災後の緊急支援・応急復旧に役立つと研究チームでは説明する。例えば、その都市のどの地域で被害が大きいのか、避難所や病院などの重要施設の被害状況はどうか、建物の倒壊によって通れなくなっている道路はどこか、といった推測も可能になるという。また、今回の技術を継続的に活用していけば、現状の観測網において、どこに観測点を追加すれば予測精度が向上するかといったことも理論的に導き出せるとする。

なお現在は、仙台平野の西縁に位置する活動断層帯「長町-利府線断層帯」の地震による宮城県仙台市青葉区の一部(建物数約3万2000棟)を対象に、今回の技術の実証研究が進められているという。今後、さらに必要なデータが整備され、シミュレーションの実施が可能となれば、今回の技術のさらなる高度化が実現する可能性もあり、地震の発生前および発生後の対応に関する実際の防災事業における活用も期待されるとしている。

なお、今回の研究を通じて、東北大学では高精度かつ高速な地震動リアルタイム予測技術の実装、日本工営ではその技術実装を通じて、きめ細やかな被害状況を推定する防災事業を展開することを目指すとしている。

  • 共同研究で開発される技術のイメージ (出所:プレスリリースPDF)

    共同研究で開発される技術のイメージ (出所:プレスリリースPDF)