企業の決算月として最も多い3月。2023年10月のインボイス制度開始後、初の本決算を迎える企業も多いだろう。

インボイス制度により、取引の正しい諸費税額と消費税率が把握できるようになった。一方で、同制度は経理担当者の業務負担が増加している要因にもなっている。取引先から受領した請求書や領収書などが、適格請求書(インボイス)の要件を満たしているかどうか確認しなければならなくなった。

経費精算システムを手がけるTOKIUM(トキウム)が22日に発表した調査結果(経理部門1046人、経理以外の部門1052人が対象)によると、経理担当者の約2人に1人が、インボイス制度開始後の最初の本決算で不安を感じていると回答した。

  • 出典:TOKIUM

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「会計システムに、経過措置や登録事業者か否かなど、税区分が正しく反映されているか」(55%)、「受け取った請求書に登録番号や税区分などの不備がないか」(52.8%)といった不安の声が上がった。

インボイス制度では、請求書に「登録番号」や「税率ごとに区分した消費税額等」などの記載が必要となった。所定の記載要件を満たした適格請求書でないと仕入税額控除が適用されないため、多くの経理担当者が会計システムへの正確な情報反映や請求書の不備の有無に不安を感じていることが明らかになった。

  • 出典:TOKIUM

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経理担当者だけでなく、経理以外の従業員の業務負担も増えている。同調査によると、経理以外の従業員の約30%がインボイス制度開始後の経費精算業務における負担が増えたと答えた。45.5%が「領収書に必要事項(登録番号や適用税率など)が記載されているかの確認」で業務負担が増えたとし、16.3%が「インボイスに対応していないため経費精算ができなかった」と回答した。1人あたり月平均87.4分の業務時間が増えたとしている。

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インボイス制度による経費精算のトラブルも少なくない。「インボイスに必要な記載事項が漏れており、経理に差し戻された」、「インボイスが理解しきれずにルールに則った領収書をもらいそびれた」、「インボイスに対応していない飲食店やインターネット通販を利用できなくなった」といった声が寄せられた。

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また、インボイスを発行できるのは適格請求書発行事業者のみで免税事業者は発行できなため、同調査によると、8.7%の経理以外の従業員が「インボイス制度に対応していない事業者との新しい取引を控えるように指示された」と回答した。

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この際、注意すべきことは独占禁止法や下請法に抵触しないかどうかだ。仕入税額控除ができないことを理由に、課税事業者が仕入れ先の免税事業者を一方的に取引から排除したり、取引価格の引き下げを求めたりすれば法に抵触しかねない。

トキウムでマーケティングを担当する中島恵里奈氏は「企業として慎重に対応を進める必要がある事項だ。実際に違反した例もある。企業は、あからさまに『インボイス制度に対応していないから取引しない』ということを取引担当者に指示してはいけない」と警鐘を鳴らす。