日本DPO協会(JDPOA)と日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)は3月13日、オンラインとオフラインのハイブリッドで日本の個人情報・プライバシー保護人材の育成のための検定試験「個人情報保護力量検定」と教育制度の創設に関する記者説明会を開催した。

プライバシーマークの課題は引継ぎや後進の育成

検定試験では、個人情報・プライバシー保護の力量を測る検定試験、教育研修プログラムとして、学生や実務担当者などが、個人情報・プライバシー保護、個人情報の取扱い(個人情報保護マネジメントシステム)に関するものだ。

  • 「個人情報保護力量検定」の概要

    「個人情報保護力量検定」の概要

まず、日本DPO協会 代表理事の堀部政男氏は「2022年7月にDPO協会としてプライバシー保護人材育成のための資格認定制度および教育プログラムを創設資格認定制度を創設した。順調に進んではいるが、JIPDECと共同で『個人情報保護力量検定』をスタートさせる」と意気込みを述べていた。

  • 日本DPO協会 代表理事の堀部政男氏

    日本DPO協会 代表理事の堀部政男氏

また、日本情報経済社会推進協会 プライバシーマーク推進センター 副センター長の金子剛哲氏は、現状のプライバシーマーク(Pマーク)の課題として「運用担当者の引継ぎや後進の育成が難しいという声が多く、課題となっている。実際にPマークの維持を断念する事業者は60社程度あり、個人情報の取り扱いの重要性は理解しているものの、何を学べばいいのか分からないという声が挙がっている」との認識を示した。

  • 日本情報経済社会推進協会 プライバシーマーク推進センター 副センター長の金子剛哲氏

    日本情報経済社会推進協会 プライバシーマーク推進センター 副センター長の金子剛哲氏

続けて、同氏は「Pマークの構築・運用に必要な知識を学べる仕組みがないか検討していたが、なかなか取り組むことができていない状況だった。そのため今回、JDPOAにおける資格運用の仕組み、われわれがテキストの監修を担当し、Pマークの構築。運用に必要な知識の力量が確認できる検定を共同運用できないかと1年ほど検討を重ねていた」と経緯を説明した。

事業者の課題としては、個人情報保護に必要な能力の定義や教育、能力が備わっている目安、有効性の評価などが挙げている。金子氏は「実際に必要な知識を件ててにより合格を目指すことで実現できるのではないかと考え、共同で実施することにした」と述べている。

検定試験の概要

検定試験は、実務に携わるうえで必要とされる知識を習得していることを検定する「スタンダード」、個人情報保護管理者、個人情報保護監査責任者を担える力量を備えていることを検定する「エキスパート」を用意。

スタンダードは学生や社会人の実務担当者、部門管理職、エキスパートは個人情報保護推進事務局や監査責任者、CPOなどを想定している。

  • 「スタンダード」と「エキスパート」の概要

    「スタンダード」と「エキスパート」の概要

日本情報経済社会推進協会 常務理事 プライバシーマーク推進センター センター長の竹内英二氏は「プライバシーマーク(Pマーク)制度は、事業者が個人情報を適切に扱っているのかを評価するものであり、われわれの基準に適応している事業者に使用してもらう制度になっている。今年で25周年を迎え、現在では1万7600社が取得している。Pマーク制度の課題の1つとしては教育に関するものが挙げられ、創設した検定が解決の助けになることを期待している」と、展望を語っていた。

  • 日本情報経済社会推進協会 常務理事 プライバシーマーク推進センター センター長の竹内英二氏

    日本情報経済社会推進協会 常務理事 プライバシーマーク推進センター センター長の竹内英二氏

試験範囲は、JDPOA発行の個人情報保護力量検定教科書と、日本規格協会から出版されている「個人情報保護マネジメントシステム導入・実践ガイドブック-PマークにおけるPMS構築・運用指針対応-」の2冊の教科書からだ。

JDPOA発行の教科書は、検定試験向けの教科書となり、日本の個人情報保護法を学習する初学者から上級者まで幅広い層が利用できるという。

教科書の内容は、企業の個人情報・プライバシー保護の実務に携わるために必要な知識水準の相当程度を網羅。プライバシーにまつわる歴史的経緯からスタートし、日本の個人情報保護法やプライバシーマーク制度の基礎、個人情報保護マネジメントシステムの重要性など、日本の個人情報保護法制、実務運用の基礎を幅広く学ぶことにより、日々の実務に求められる知識の土台を形成することを可能とし、販売価格は税込で2970円。

一方、日本規格協会出版の教科書は、プライバシーマークを取得済み、あるいはこれから取得する企業が個人情報保護マネジメントシステムを導入・運用していく中で参照する実務的なガイドブックで、販売価格は税込で4950円となる。

難易度が高いからこそ、誇れる検定

検定試験の開始は4月8日からで毎日受験でき、申込受付開始日は3月25日12時~、シー・ビー・ティ・ソリューションズのWebサイトで試験申込受付の開始を予定し、会場は全国350カ所のCBT(Computer Based Test)テストセンターとなる。

出題範囲(全50問)はスタンダード・エキスパート共通で、プライバシーの基礎(時事問題を含む)、日本の個人情報保護法(民間部門)・番号法の基礎(「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&Aを含む)、個人情報保護法コンプライアンス対応、プライバシーマーク制度と個人情報保護マネジメントシステム、プライバシーマーク付与適格性審査指針、プライバシーマーク制度における個人情報保護管理者(CPO)と個人情報保護監査責任者の役割(エキスパートのみ)。検定の主催や設問の作成などはJDPOA、監修はJIPDECがそれぞれ担当する。

日本DPO協会 理事の杉本武重氏は「難易度は高く、合格率はスタンダードで30%、エキスパートは10%ほどだ。年間3000人程度の受験を見込んでいる。また、50問の設問のうち、スタンダードは35問、エキスパートは15問をJDPOA発行の教科書から出題する。高い基準点を設けることで、難しい検定だと思われてしまうかもしれないが、チャレンジして合格することで正確な知識が身に付き、信頼されるとともに誇れるものだと思う」と説明していた。

  • 日本DPO協会 理事の杉本武重氏

    日本DPO協会 理事の杉本武重氏

試験時間は100分間(スタンダード・エキスパート共通)、出題形式が択一式の設問からの出題、合格発表は試験終了後に即時発表され、受験料は一般が1万1990円(税込)、学生が9990円(同)となる。

なお、教育制度は今後は検定試験の準備のための教育研修プログラムを提供する教育事業者を認定し、認定教育事業者は自己学習よりも効率的に学び、授業終了後すぐに受験できる短期集中型の研修プログラムを提供する。