LINE WORKS社は3月12日、事業戦略説明会を開催した。同社は、2024年1月にワークスモバイルジャパンからLINE WORKS社へ社名変更している。
リブランディングし、AIでさらなるブーストを
冒頭に登壇したLINE WORKS社 代表取締役社長の増田隆一氏はまず、この1年のビジネスにおける主なトピックを振り返った。
同氏によれば、2024年1月時点でビジネスチャットツール「LINE WORKS」の導入社数は46万社、ユーザー数は500万人に到達。他のサービスとの連携ソリューションは170程度となり、特にこの1年で外部との連絡に使用する外部接続ユーザー数が130万人と増加傾向にあるという。事業としては2023年2月にLINE社のAI事業であるLINE CLOVAを吸収分割により事業承継することを発表し、4月にはAI事業を組織統合した。
「AI事業をどうしていくのかに労力を割いた1年でした」(増田氏)
その上で同氏は今後、LINE WORKS社がLINE WORKS単一プロダクトから、AI製品を含む複数プロダクトを提供する会社へと進化する方針を示した。具体的には、2024年5月末を目途にリブランディングを行い、LINE WORKSの新たなプロダクトアイコンを発表するという。新しいアイコンにはCONNECT/BOOST/TRUSTという3つのブランドアイデンティティへの思いが込められている。
CONNECTについて増田氏は、将来的に日本市場向けのAI機能の追加を視野に入れたパッケージングを目指すとし、コンポーネント化を進めていると話した。LINE WORKSはこれまで全ての機能を1つのアプリケーションで利用できる使いやすさを重視してきたが、今後、AIを活用した新機能を導入するためには、一部を別のアプリケーションにするかたちも必要だと判断したという。一方で、使いやすさが損なわれることがないよう、統合ログイン管理提供のための整備を進めているそうだ。
BOOSTではAIを活用した新たなプロダクトの展開を予定しており、社内では「Co Works Project」としてLINE WORKSにAIを実装するプロジェクトが進んでいるという。ここで同氏は2023年2月に発表したLINE WORKSの「AI秘書」機能について言及した。この機能はLINE WORKS上で予定に関するメッセージがあれば、アシスタント機能がスケジュール登録を提案するといったものだ。増田氏はAI秘書の現状について「絶賛開発中であるものの、何が実装されたら顧客の役に立つのかが導き切れていない」と述べた。また、2024年3月に正式決定が見込まれているAIに関する政府方針についても触れ、「自分たちが何をすればAIを提供できるのか、見極めるのを待っている状態」だと話した。
「必ずしもITが得意ではない人がさりげなく使えるのがLINE WORKSであるが故、安心・安全を担保するのが我々の役割です」(増田氏)
そこで重要になるのがTRUST、すなわちセキュリティ面の信頼性である。法人ニーズに合わせたセキュリティ運用が不可欠であることから、2024年4月に「LINE WORK セキュリティホワイトペーパー」を発刊する予定だ。
「信頼や信用を犠牲にしてまで新しいテクノロジーを導入すべきではないと考えています。心理的安全性を醸成するブランドを目指します」(増田氏)
新プロダクトも既存プロダクトもAIが主役に
次に登壇したLINE WORKS社 事業企画本部 本部長の大竹哲史氏からは、生成AIを活用したプロダクト展開や、今後のLINE WORKSのプロダクトの方向性について説明がなされた。
生成AIを活用したプロダクトとして同社が取り組みを進めているのが、「LINE WORKS AiCall」「LINE WORKS OCR」「LINE WORKS Vision」である。LINE WORKS AiCallは「いわゆるボイスチャット」(大竹氏)だと言い、自然な対話応対を実現する企業向けの電話応対AIサービスだ。すでにヤマト運輸の集荷受付やチューリッヒ保険の事故受付窓口などで採用されているという。
一方、LINE WORKS OCRは書類や画像を読み取り、素早くデジタル化するAI-OCR(文字認識)サービスである。特徴としては、帳票特化型のAI-OCRモデルを提供しており、すでに弥生のサービス「スマート証憑管理」で請求書特化型や領収書/レシート特化型のOCRが採用されているという。また、LINE WORKS Visionはモーション検知機能などを搭載したフルクラウドカメラである。
LINE WORKS自体の方向性としては、3つの項目が挙げられた。1つ目に挙げられたのは、マルチプロダクトの提供を実現するための基盤の見直しだ。2つ目は、個別商品の正常進化。これは同社が大切にし続けているUI/UXの向上を意味する。3つ目は、AIを活用したLINE WORKSの強化であり、コミュニケーション領域から順次搭載予定だという。
増田氏の説明にもあったCo Works Projectは、この3つ目の方向性に該当する。現在進めているこのプロジェクトでは、社内でLLM活用のためのPoCを行っているそうだ。大竹氏は、「最終的にはノーコードで、LLMアプリケーションをLINE WORKSに展開できるようにしていきたい」と語り、「働く全ての人にとってのビジネス基盤となることを目指す」と結んだ。
顧客とつくり上げる、セキュリティのさらなる強化も
最後に登壇したLINE WORKS社 CISO 兼 CPO 兼 サービスオペレーション本部 本部長の松本達也氏からは同社のセキュリティ強化に関する取り組みが説明された。
法人顧客のデータを安全に管理するために、国内にデータセンターを置いていることやLINE WORKSサービス専用のインフラで運営していること、開発・運営委託先のNAVER Cloudに対し、日本からガバナンスを実施していることなどは、すでに同社のホームページでも公開されている。
また、新たな認証取得への継続的な取り組みも行っている。2023年にはISO/IEC 27701を取得しており、「2024年にはAPEC CBPR(越境プライバシールール)の取得を目指す」(松本氏)という。さらに「セキュリティはベンダーとお客さまで一緒につくり上げていく」(松本氏)という考えの下、2024年4月には「LINE WORK セキュリティホワイトペーパー」を発刊する予定であることも改めて示した。