突然ではあるが、自身が業務で利用するSaaS(Software as a Service)の数をカウントしたことがある人はいるだろうか?先日、米Oktaが公表したグローバルの調査では1社平均によるグローバルの調査では1社平均93個のアプリケーションを利用しているという。昨今、SaaSの利用はあまねく企業に浸透しているとは言え、その管理に苦心することが多いのも事実だ。本稿では、マネーフォワードiのSaaS(Software as a Service)管理プラットフォーム「マネーフォワード Admina」の導入をリードした、マクアケ 開発本部/IT基盤部 部長 星川塩見氏の話を紹介する。
100以上のSaaSを管理するマクアケのIT基盤部
ご存知の方も多いが、マクアケでは「アタラシイものや体験の応援サービス」をタグラインにプラットフォーム「Makuake」を運営している。元々はクラウドファンディングのサービスとして開始したが、現在は新商品やサービスのデビューに特化したプラットフォームと位置付けている。
中小企業から大企業まで、ものづくりのメーカーや飲食店、サウナ施設など、新しいものを出したい、新しいサービスを始めたいといった企画段階で商品やサービスの販売を開始し、生活者のが応援の気持ちを込めて購入するプラットフォームだ。四半期で約600件の新規プロジェクトがスタートし、これまでの累計プロジェクトは3万7000件超となっている。
現在の従業員数は190人で、IT基盤部が情報システム部門の役割を担っており、筆者も驚いたのだが、3人のメンバーで業務を遂行している。
星川氏は「業務としてはサービスデスク、サポートデスクが主になり、3人が同じ職務ではなく、私はサービスデスク側に軸足を置いています。また、業務プロセスや社内の効率化に心血を注いでいるメンバーもいます」と説明する。
これらの業務に加え、SaaS契約の是非を決める延長で開発本部に関わる、契約・押印の窓口も兼務し、法務と連携して契約書のやり取りなど、総務的な内容の業務も担当している。
具体的な星川氏の業務としては、従業員に新しいミッションが発生した際に社内で利用している100以上のSaaSアカウントの切り出しをはじめとしたアカウントコントロールが多いという。
「よくある話で“対応までに時間をいただきます”などのお役所的なやり方を3人とも好んでいません。困っているからこそ急ぎで頼んでくることだと思うので、可能な限り早く対応しようということは心掛けています」(星川氏)
Adminaを導入した経緯とは
こうした100以上のSaaSを利用する同社において、アカウントをコントロールする立場の星川氏としては「適切なアカウントコントロール」「コストの可視化」「業務負荷の軽減」に課題を抱えていた。
実際、3カ月前に異動した人の権限変更や退職した人のアカウント削除が漏れてしまったことがあったほか、コストの可視化も請求書や領収書などは1つずつ確認し、契約延長の可否についても1~2カ月前には提供先の企業に伝えることが望ましいが、それが徹底できていない状況だったという。
そして、これらの管理は既存のツールを用いて、手作業でチェックしていたため、労力がかかっていたという。
このため、同社では最終的にAdminaと他社ツールの2つのサービスに絞り、最終的にトライアルを1カ月ずつ実施した。では、なぜAdminaを選択したのだろうか?
その理由について同氏は「両方のツールをガッツリ使いましたが、一番大きかったのはコストの可視化です。Adminaの方がわれわれにとって、やりたいことができると感じました」と述べている。
また、同じSaaSでも利用者全員が同じプランを使っていれば問題ないが、職務によっては異なり、さまざまなプランが混在している。同社ではfreeeのコーポレートカードを利用しているため、データ連携すれば支払いの状況も可視化できることに加え、インタフェースも直感的なため操作の容易さなども決め手となった。
さらに、Slackコネクトでマネーフォワードiのサポートデスクチャンネルと連携していることから、心強いと感じているようだ。
従業員にとって“魔法の箱”であるために
一方、運用ルールに関しては、Adominaで実現したいことが明らかであったとともに、スムーズな運用を目指していたため、特にルールを設けていないという。ただ、導入後に試行錯誤して、フィットさせていくことに課題を持つ企業も存在する。
その点について、星川氏は「苦労は全然ありませんでした。従来、異動や退職などでアカウントコントロールする際は、どの程度時間がかかるか判然としない状況で行っていました。しかし、Adominaでは可視化されているため、異動や退職すれば保有アカウント数を事前に把握した状態からスタートできることから、負荷の軽減につながっています。ツールをフィットさせるために苦労をすることなく、自然と業務がスムーズになっていきました」という。
続けて、同氏は「これまでにも、SaaS導入に関するハードルや運用を軌道に乗せるまでの苦労を経験しています。しかしAdminaは、ここ最近の中では一番楽に導入できたソリューションでした。現状の当社にピッタリはまっていて、今やりたいことをやりたい規模で実現できています」と話す。
現在、同社ではAdminaの導入から1年が経過し、導入後2カ月で残存アカウント数はゼロになったという。そして今後は、アカウントの発行はAdminaですべて一元管理できる状態を目指している。
「いわゆるフルターンキーの状態です。現状はできていませんが、部署ごとにプリセットがあり、該当する部署に社員がジョインした際に必要なアカウントがまとめて発行できるような世界です。営業部門、開発部門、法務部門など、それぞれ利用するSaaSは異なるため、ワンクリックでアカウントセットの払い出しができればと考えています」(星川氏)
そしてIT基盤部の将来像について、星川氏は「従業員にとって“魔法の箱”でありたいため、何かしらのリクエストが来たら即座に対応できるような部署、ひいては遠慮せずに物事を自然に頼める部署でありたいと考えています。攻めに出るような人たちに適切な武器を渡して背中を押してあげられるようなチームでありたいです」と力を込めていた。