2024年3月6日、文部科学省傘下の科学技術振興機構(JST)は、2023年10月から開始した「革新的GX技術創出事業」の第1回公開シンポジウムを東京都文京区にて開催し、カーボンニュートラル技術の事業化に向けて、大学や公的研究機関などが将来の社会実装に向けた基盤技術を研究開発する意義や目的などを議論した。
JSTは、2023年10月に革新的GX技術創出事業で進める「蓄電池領域」「水素領域」「バイオものづくり」の3領域で実施する研究開発テーマとその研究開発担当者を公表した。今回のシンポジウムは、この研究開発を始めて約半年経ったことを踏まえ、再度、革新的GX技術創出事業が目指す研究開発を実施する事業内容などを確認することを目的として開催されたもの。
冒頭に、同事業のプログラムディレクターを務める魚崎浩平氏が、「革新的GX技術創出事業の開始にあたって」というタイトルで講演。脱炭素化に向けた優れた研究開発成果を上げて将来の脱炭素・低炭素事業の社会実装につなげていくという目標を強調した。
また、その講演の中で「中・長期的な脱炭素社会に移行する過程を実現するために、政府は今回『GX経済移行債』を発行し、これを研究開発事業の原資とする」と説明したほか、「この移行債の発行は、脱炭素社会を実現する自信があるために、その研究開発を進めるための借金をするように、政府・内閣府・文部科学省などにお願いをしたものだ」と、その意義を語った(具体的な詳細は非公開の模様)。
魚崎浩平プログラムディレクターの講演後、「蓄電池領域」「水素領域」「バイオものづくり」の3領域の各プログラムオフィサー(PO)が各領域で進めている研究開発内容の解説を実施。その後、「蓄電池領域」「水素領域」「バイオものづくり」の3領域の各研究開発テーマの責任者が自身の研究開発テーマの研究開発内容を記したポスターセッションが実施され、それぞれの研究開発内容の具体的な進め方などについての議論が交わされた。3領域の研究開発担当者同士が実際に顔を会わせて具体的な議論する機会となった模様だ(最近は各領域内でもオンライン会議が主として実施されている模様である)。
このほか、東京大学先端科学技術研究センターの杉山正和センター長・教授を座長とし、「GtoXにおいて、どのような研究に取り組み、社会実装に繋げていくか」というタイトルでのパネル討論が実施され、パネリストたちの間で優れた研究開発成果を社会実装する方法などの具体策が議論された。
筆者注:「GX経済移行債」は、日本政府が2050年時点での温暖化ガスの排出実質ゼロを実現するために、国による支出を確保する目的で発行する新しい国債のことで、10年間で20兆円規模の発行が見込まれている。2024年2月に初めて発行すると見られていた(詳細は不明)。政府の資金を呼び水に、官民あわせて10年間で150兆円を超える脱炭素投資につなげる原資にする計画といわれている。