米オラクルは3月4日(現地時間)、フルマネージドの分散クラウド・データベース「Oracle Globally Distributed Autonomous Database」を提供開始したと発表した。
分散データベースの特徴
「Oracle Globally Distributed Autonomous Database」を知る上で、カギとなるのが分散データベースだ。同社は2017年から分散データベースを提供しているが、米オラクル ハイ・アベイラビリティ・テクノロジー担当シニア・バイスプレジデント ウェイ・フー氏は、同社の分散データベースの特徴について、次のように述べた。
「分散データベースは単一の論理データベースながら、シャードにまたがる形で分散している。シャードはレプリケートされており、1つのシャードがダウンしても他のシャードを使える。自動でデータ分散が行え、地域をまたぐ形で配置できる。クエリーも数のシャードをまたいで並列処理ができる」
フー氏は、分散データベースの用途として、「スケーラビリティの確保」「データ主権の確立」を挙げた。
「Oracle Globally Distributed Autonomous Database」の特徴
ただし、分散データベースは複数の拠点に多数のサーバの導入を伴うため、管理が煩雑になりがちだ。この課題を解決するデータベースが「Oracle Globally Distributed Autonomous Database」となる。
「Oracle Globally Distributed Autonomous Database」は、Oracle Databaseシャードのプールを形成するために水平にパーティション化された単一の論理Oracle Databaseだ。
具体的には、「Autonomous Database」のAIと機械学習(ML)による自動化をデータ分散とシャード管理の自動化にまで広げることで、分散データベースの管理の複雑さを解消する。
管理者は、分散データベースを1つの論理データベースとして、自動化されたプロビジョニング、チューニング、スケーリング、パッチ適用、セキュリティ機能を活用できる。
加えて、シャードごとにデータベースのスケーリングを自動化することで、需要に応じてリソースを増減し、消費量とコストを最小限に抑えられるという。
「Oracle Globally Distributed Autonomous Database」のアドバンテージ
フー氏は、「Oracle Globally Distributed Autonomous Database」の競合に対する強みとして、競合よりもデータの分散、レプリケーション、デプロイメントの方法が多彩であることを挙げた。
フー氏によると、他社が提供するデータの分散方法はせいぜい1つ2つだが、オラクルは以下のように6種類提供している。
シャードのデプロイメントについても、「シェアナッシングのサーバにシャードを置ける」「RACのようにフォルトトレラントなクラスタをサポートする」「クラウド、オンプレ、マルチクラウドに対応する」といった具合に、「他社より充実している」と、フー氏は語った。
そのほか、SQLエンジンも#「Oracle Globally Distributed Autonomous Database」の強みだという。他社の分散データベースはNoSQLエンジン上で実行されるが、オラクルはSQLエンジンを拡張して分散している。フー氏は、「NoSQLを使うと、製品をすぐに市場に投入できるが、パフォーマンスの問題がある。NonSQLはレポートやアナリティクスに使えない。他社がスケールのためにNoSQLからSQLに乗り換えようとすると何十年もかかる」と指摘した。
「Oracle Database 23c」の新機能
さらに、フー氏は「Oracle Database 23c」の新機能にも言及した。その一つがRaftクォーラム・ベースのコンセンサス・レプリケーションだ。RAFTレプリケーションはアクティブアクティブ構成で、3秒以内にレプリカに対し自動フェールオーバーを提供する。そのため、データ損失ゼロを実現するという。
2つ目の新機能は「AI Vector Search」だ。検索拡張生成(RAG)が統合された「AI Vector Search」により、類似検索が可能になるという。ビジネスデータの検索でAI Vectorを使えるようになる。フー氏は「LLMとハイパースケーラーデータベースの組み合わせで、ベストなAI検索を実現できると考えている」と語っていた。