NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は2月19日、医療・ヘルスケア領域のソリューションについて改めて紹介する場を設けた。また、いくつかのソリューションについてはデモも公開した。
同社は自社が保有するデータセンターやネットワーク、AIなどのICTを活用しながら、データ利活用の実績と全国の病院をカバーする企業認知度なども有効活用する構えだ。予防から診療・治療、さらには予後・介護まで各フェーズでソリューションを展開する。
NTT Comは2022年にNTTドコモ配下となり、法人向けソリューションを展開する「docomo Business」ブランドを立ち上げた。NTTドコモが持つデバイスや5Gネットワークなども有効に活用していく。
予防フェーズのソリューション
予防フェーズのソリューションの例としては、1月に公開した「あなたの健康応援団 ~Smart Data Health Supporter~」が挙げられる。これは企業や健康保険組合向けに展開するもので、データ活用により健康経営をサポートする。
健診結果やPHR(Personal Health Record)データを同サービス基盤に取り込むことで、特定保健指導の対象者やその予備群の状況を可視化し、健康に関する動機付けや日々の行動変容に関する継続的なフォローなどをサポート。健康リスクを迅速に把握できるようになるという。
認知症予防のソリューションとして、「脳の健康チェックplus」も手掛ける。ナビダイヤルで電話をかけ、日付などいくつかの質問に答えるだけで脳機能を5段階で確認可能だ。2023年9月の公開以降1.5万コールの反響があり、利用者は60代までの人が72%と、若年層からの興味関心も高いことが明らかになった。
フリーダイヤルで脳の認知機能低下の有無を判別できる「脳の健康チェック」については、デジタルヒューマン「CONN」に組み込んだものをトライアルとして体験可能。デジタルヒューマンとの会話の中で認知機能の低下を判別できる。
診療・治療フェーズのソリューション
診療・治療フェーズでは病院内のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するため、PHSからスマートフォンへの切り替えを促すソリューションを展開する。スマートフォンは医療従事者にもなじみのあるデバイスで導入の障壁が低く、チャット機能やAI、クラウド技術などとの相性が良い。
音声入力機能を活用した電子カルテ記入作業の削減、グループチャットを活用した申し送りの効率化など、スマートフォンを活用した業務効率化が見込める。同社が実施した実証実験の結果、看護師は移動などに要していた時間を削減し、本来業務であるケアの時間を創出できたそうだ。
音声認識は事前に辞書登録も可能なので、例えば「ツムラの1番」と音声入力するだけで、電子カルテに「ツムラ葛根湯」と入力されるような機能も有する。
遠隔医療や訪問看護も増加する現代、スマートグラスなどオンラインシステムを活用したソリューションも展開している。褥瘡(床ずれ)のケアをする訪問看護師が見ている視野の映像を伝送し、病院にいる医師が映像を確認して指示を出すことで、医師の移動や状況確認に要する時間の削減が見込めるという。
院内の医療従事者や患者の位置を可視化する「LocoView」は、コミュニケーションや勤務管理を支援する。院内には位置情報を取得するためのビーコンを設置し、アプリをインストールしたスマートフォンの位置情報を取得する。なお、ビーコンはソーラーパワーで稼働するため電源不要。
このソリューションは特定の患者を探す時間を短縮できるほか、医療従事者同士が互いの位置情報を確認できることで、例えば、医師が診察室にいれば外来患者の対応中だと判断し電話ではなくチャットを送信するといったように、業務状況を考慮した適切なコミュニケーションが実現できる。
予後・介護フェーズのソリューション
予後・介護フェーズのソリューションとしては、心疾患患者のリハビリを支援する「みえるリハビリ」が挙げられる。個人の運動習慣獲得をサポートするもので、ナノファイバー生地に高導電性樹脂をコーティングし生体信号を検出する「hitoe」を使った着衣型ウェアラブルデバイスを活用する。
運動強度(METs)や運動時間などの目標管理と、自身に適した運動の継続を支援する。dポイントの付与やフィードバックメッセージなどにより、運動の継続を促すための仕組みも構築しているそうだ。