MM総研は2月16日、「小中学校におけるGIGAスクール端末の利活用動向調査」(2024年1月時点)」の結果を発表した。これによると、ICT(情報通信技術)が教育に定着し始めており、利用度が高いほど生成AI(人工知能)などの新たな技術の需要性が高い一方で、利用が進んでいない自治体もあり、自治体間の温度差は引き続き残っていことが分かった。

GIGAスクール端末の利用状況

同調査は同社が2023年11月から2024年1月にかけて、全国1741自治藍の教育委員会(1738委員会)を対象として主に電話により実施したものであり、有効回答件数は1101件。

GIGAスクール端末を毎日利用している自治体の比率を状況別に見ると、授業が77%、端末の持ち帰りが24%、教員による授業以外での利用が40%だった。前回調査の2022年12月時点との比較では、授業で毎日利用する割合は微増しており、この1年でより定着していると同社は見る。

持ち帰りは前回よりも7ポイント増えたが全体の4分の1に留まっており、多くの自治体で「端末は授業で利用するもの」となっている。学びの保障の観点からも、端末を家庭でも当たり前に使える環境を整えていく必要があると、同社は指摘する。

  • GIGAスクール端末を毎日利用している自治体の比率 出典: MM総研

GIGAスクール端末の授業での利用用途数を見ると、2021年10月の時点では1自治体あたり平均1.7、2022年12月時点では3.8、今回は4.9と増加傾向にあり、GIGAスクール端末の用途は時間と共に拡大している。

用途別の利用率は、どの用途でも自治体数ベースで約6~8割弱であり、利用率はいずれの用途でも伸びている。

  • GIGAスクール端末の授業での平均用途数と自治体数ベースの用途別利用率 出典: MM総研

GIGAスクール端末の活用に消極的な自治体も

授業での用途数では7つ以上で利用している自治体が44%と前回調査から31ポイント増加した。用途数が3つ以上の自治体の構成が変化しており、使い始めたことでより多くのシーンで利用するなど、活用度合を上げていることがうかがえる。

一方、1~2つの用途の自治体は24%で前回調査から5ポイント減に留まり、用途数を減らした自治体もあるなど、GIGAスクール端末の活用に消極的な様子も見られた。

  • 授業での用途数の自治体構成比 出典: MM総研

端末の活用度向上における課題では、「教員のICTスキル」が50%で前回調査から11ポイント減少、改善傾向は見られるものの、引き続き最大の課題となっていると同社は見る。

教員のICTスキル不足を課題とした自治体に要因を尋ねたところ、「習得のための時間が足りていない」が64%、「デジタルに抵抗感がある教員が多い/メリットを感じない」が57%だった。

このことから、教員にスキル習得やデジタルのメリットを訴求する時間を作り出す必要があると、同社は指摘する。なお、文部科学省は教員定数の改善や特別免許状なども含めた外部人材の登用、校務DX(デジタル・トランスフォーメーション)による業務効率化を推進するなど、リソース不足解消に対策を進めているとのこと。

一方で、スキル習得の環境を課題として挙げる自治体は1割前後に留まっており、は大きな課題になっていないという。

  • 教員のICTスキルが不足している要因(複数回答) 出典: MM総研

生成AI利用を制限している自治体の割合は?

生成AI利用の推進・制限状況に目を転じると、児童生徒に対しては、「活用を推奨」は7%に過ぎず、「活用を制限」が19%、「特に推奨や制限はしていない」が74%を占めている。教員に対しては、推奨が14%、制限が8%と、児童生徒よりは推奨する方向にある。

生成AI利用での課題は、「情報の正確性」「ガイドラインの未整備」「著作権の侵害」「個人情報の漏洩」などが4~5割で上位を占めた。

文部科学省は2023年7月に「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を公表しており、その以前となる2023年5月の調査では、児童生徒・教員のいずれに対しても推奨する自治体は1%未満だったことから、ガイドライン公表により利用してみようという自治体が現れてきたと、同社は見る。

  • 生成AI利用の推進/制限状況 出典: MM総研

教員に対する生成AIの利用推奨・制限の状況を、授業における端末用途数別に分析したところ、用途数が多い自治体ほど推奨する割合が高くなる相関関係が見られた。

GIGAスクール環境が整備され、授業でのデジタル活用を進めた結果、自治体が「教育ではデジタルが有用」とポジティブに捉えている可能性を示唆するものと、同社は推測する。

  • 教員の生成AI利用の推進/制限状況 出典: MM総研

今回の調査結果から、GIGAスクール環境の活用は全体として着実に進んでいる半面、一部の自治体では変化が見られなくなってきているという。2025年度から2026年度に本格化する端末更新の、さらにそ次の更新である「3rd GIGA」を見据え、こうした自治体の活用状況や課題を項目ごとに数値で浮き彫りにし、それぞれに適したきめの細かい支援が求められると、同社は提言している。