NTTデータ経営研究所は2月8日、アンケート調査「働き方改革2023」の結果を発表した。これによると、働き方改革に取り組む企業は47.1%に上るが一部企業ではテレワーク廃止の動きがあり、またリスキリングに取り組む人の半数近くは自身のエンゲージメントが高いと感じる傾向にあるという。

同調査は同社が、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコム リサーチ」の登録モニターを対象に、2023年11月22日~28にかけて非公開型インターネットアンケートにより実施したものであり、有効回答者数は1086人。対象は、従業員10人以上の企業・団体に勤務する、経営者・役員を含む20歳以上の男女ホワイトカラー正社員。

企業の働き方改革の現状、テレワーク利用は減少傾向

働き方改革に取り組む企業は全体の47.1%であり、直近4回の調査では2022年に次いで低い。コロナ禍(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大)を経て、企業の働き方改革への新たな取り組みが2019年や2021年と比較して停滞していると、同社は見る。

  • 働き方改革に取り組んでいる企業の比率 出典: NTTデータ経営研究所

テレワーク制度を整備している企業は、2022年の調査と比べ0.4ポイント減の46.0%、整備していない企業は同3.2ポイント減の42.0%だった。「過去に制度があったが今年廃止された」との回答が4.1%あり、コロナ禍を経て制度自体を見直す動きも出ていると同社は推測する。

  • テレワークの整備状況 出典: NTTデータ経営研究所

テレワークの実施頻度を見ると、制度を整備している企業でも、「実施していない」との回答が2022年の調査と比べて4.6ポイント増の29.0%、週1日以上実施が同3.4ポイント減の58.2%だった。制度自体は存続しているものの、利用頻度はやや減少傾向にあるという。

  • テレワークの実施頻度 出典: NTTデータ経営研究所

就業時間外の業務対応をしている人の割合は?

過去半年間、顧客から就業時間外に業務関連だが緊急性のない電話やメール(LINEなどを含む)を受け、通話・返信などを週1回以上対応している人は、2022年の調査と比べて、0.3ポイントとやや減少、同僚とのやり取りでは同0.2ポイント増、部下とのやり取りでは同0.7ポイント増だった。就業時間外に業務上の対応をしたことがある人の割合は横ばいとなっている。

月1回以上就業時間外に業務上の対応をしたことがある人は、2021年度では3~5人に1人、2022年度と2023年度は4~6人に1人となっており、「つながらない権利」は2022年度にかけて進展したものの、その後あまり進展していないと同社は見る。

  • 就業時間外の業務関連で緊急性が無い電話やメールへの対応 出典: NTTデータ経営研究所

就業時間外に業務に関する緊急性の無い電話やメールに対応することへの考え方では、「対応しない」もしくは「そもそも連絡を受信しないようにする」と回答した人は、2022年調査と比べて3.7ポイント、2021年調査からは6.8ポイント、それぞれ増加した。

「つながらない権利」の確保に向けた社内ルールの整備の進展と共に、個人の意識変化が進んでいるという。

  • 就業時間外に業務関連で緊急性が無い電話やメールへの対応に対する考え方 出典: NTTデータ経営研究所

キャリア形成に支援の体制はあるか?

キャリア形成に関して、勤務先の「十分な支援の体制がある」との回答は17.0%に留まる一方、「支援体制が十分ではない」との回答は29.5%、「支援体制があるのかよくわからない」が53.6%と過半数を占めた。

岸田政権の指針における「一人ひとりが自らの意思でキャリアを築き上げる」段階に向けた、キャリア形成に対する企業の支援体制の整備には遅れがあると同社は推察する。

  • 勤務先のキャリア形成に対する支援体制と、自身のキャリア・プランの状況 出典: NTTデータ経営研究所

リスキリングの必要性を感じている人は、合計で全体の31.6%だったが、実際に取り組んでいる人は18.2%に留まっている。

リスキリングに取り組んでいる人のうち、エンゲージメントが高いと感じている人は計49.5%と半数近くを占めが、取り組んでいない人ではエンゲージメントが高いとの回答が9.2%に留まり、取り組んでいる人とは40.3ポイントの差があった。

  • リスキリングへの取り組みとエンゲージメントの状況 出典: NTTデータ経営研究所

今回の調査結果に関して同社は、働き方改革の取り組み状況、繋がらない権利への意識変化の傾向、キャリア形成や能力開発、ウェルビーイングといった従業員に対する企業の支援体制により一層充実させる余地があること、リスキリングへの取り組みとエンゲージメントとの相関性などが窺えたとしている。

リスキリングに関しては、実際に取り組んでいる人のうち、自身のエンゲージメントが高いと感じている人が49.5%あり、従業員の能力向上において啓発や仕組みの整備を充実させることの重要性は高いと同社は見る。

また働き方改革については、より生産性の高い働き方を探索する動きが弱まっている可能性を示唆する。

コロナ禍の働き方が各社にとって最も望ましいものとは言えないものの、自社にとっての最適な働き方を追求していくことが重要だと、同社は提言している。