ベトナム南部ドンナイ省のラックホン大学(LAC HONG University:LHU)とサン・エデュ国際教育社(Sun Edu International Education Joint Stock Company:ホーチミン市)が1月22日、半導体の集積回路(IC)設計センタの設立に向けて戦略的協力協定を結んだとベトナムの国営通信社ベトナムニュースエージェンシー(VNA)が報じている

ラックホン大は協力協定締結式典にて、「半導体技術はエレクトロニクス産業の中核だが、世界的に人材が不足している。ドンナイ省は人材が豊富でハイテク企業が多く存在し、地理的にも交通面でも半導体産業が発展する土壌がある」と説明したほか、「半導体設計センタの設立はドンナイ省の半導体産業発展に向けた重要な一歩であり、質の高い人材の育成、研究、技術移転に重点を置く」と述べたという。

政府目標は2030年までに半導体技術者5万人育成

ドンナイ省のグエン・ホン・リン書記によると、両者の協力調印により、重要な半導体プロジェクトのための人材育成における協力が促進されるという。ドンナイ省はこれらのプログラムを支援し、今後効果的にそのための条件を整えるとしている。

また、ドンナイ省人民委員会のグエン・ソン・フン副委員長は、同センタは2030年までに半導体産業で5万人の技術者を育成するという政府目標の実現に貢献する場所になるとするほか、ハイテク分野におけるエコシステムの完成に向けて、Industry 4.0に関連する技術分野のスキルを向上させるための研修コースの展開も目指しており、ドンナイ省やベトナム南東部に高度な半導体関連の人材を輩出することを目指すとしている。

半導体産業の注目を集めるベトナム

米バイデン大統領は2023年9月、ベトナムを訪問しベトナム外交上最高位の「包括的戦略パートナーシップ」を締結。ベトナムの半導体関連産業や人材の育成面で連携を進め、強靭なサプライチェーン構築を目指すことを示した。これを受けて米国政府は、半導体サプライチェーン強化の具体的案件として、Amkor Technologyが建設する北部バクニン省の工場の2023年10月の稼働開始、SynopsysとSaigon Hi-Tech Parkの共同事業による半導体の設計拠点とインキュベーションセンターの設立、Marvell Technologyのベトナム設計拠点設立、NVIDIAのベトナムICT大手FPTや同通信大手ViettelなどとのAI関連事業での提携などを発表した。またNVIDIAのJensen Huang CEOは2023年12月にベトナムを訪問、同国のファム・ミン・チン首相と面談しベトナムにAI研究開発や設計および人材育成のための拠点設立する意向を表明した。

このようにベトナムは昨年のバイデン大統領の訪問を機に半導体関連分野で注目度が高まっており、近い将来、ベトナムが半導体サプライチェーンにとって重要な役割を果たす可能性が出てきた。今回のラックホン大学によるIC設計センタ設立もこの流れの一環といえる。

今まで中国を事業の軸として据えてきた企業の中には、米中の対立の影響を踏まえ、中国からベトナムに事業移転を進める企業も増えているという。ベトナム政府も、韓国や日本の企業にも半導体関連ビジネスで自国に投資するよう呼び掛ける動きを見せている。