デル・テクノロジーズ(以下、デル)はこのほど、デジタルトランスフォーメーションオフィスのチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)を務めるAjaz Munsiff(エイジャズ・ムンシフ)氏が、AIについてメディアやアナリストに向けて語る機会を設けた。

デルCDOが語る生成AIの可能性

Ajaz氏は「AI技術そのものは決して新しいものではない」としながら、「生成AIはIT技術の進化というよりも革命といえる。私たちに与えるインパクトも大きく、重大な機会をもたらす」と語っていた。

  • 「おはようございます」と日本語で挨拶するAjaz Munsiff氏

    「おはようございます」と日本語で挨拶するAjaz Munsiff氏

ルールベースやマシンラーニングによる従来のAIは、すでに身の回りでも多く活用されている。ECサイトのレコメンドやソーシャルメディア、オンライン広告などはAIによって最適化されている代表的な例だろう。こうしたAIは過去のデータに基づいて未知のデータを分類、あるいはパターンを予測している。

対する生成AIはテキストや画像、音声、音楽など、まだこの世界に存在しない新しいコンテンツを生み出せるという点において、従来のAIとは大きく異なる。「生成AIはすでに技術を民主化できている」とAjaz氏は述べた。ChatGPTをはじめ自然言語で生成AIを扱えるため、特別な技術やプログラミングの知識を持たなくても生成AIを活用できる。

最近では生成AIを活用した顧客応対や業務変革の事例も見られ始めたように、生成AIによってコスト最適化や生産性向上、売上増加、顧客満足度の向上などが図られている。これらは、生成AIの利用が企業の競争優位性につながっている例だ。

「生成AIの活用は初期段階であり、おそらくまだ氷山の一角。これからさらに多くの可能性が期待できる」と、Ajaz氏。

しかし同時に、「AIの活用には責任も伴う。倫理やデータプライバシー、セキュリティの観点は企業だけでなく個人にも社会にも求められる。妥協は許されない」と指摘し、警鐘を鳴らす。

  • Ajaz Munsiff氏

デルが掲げる4つのAI戦略「AI in」「AI on」「AI for」「AI with」

小誌でもこれまで何度かお伝えしてきたように、デルのAI戦略は「AI in」「AI on」「AI for」「AI with」の4本柱だ。

2023年5月31日掲載:DellのAI戦略は「AI-In、AI-On、AI-For、AI-With」 - Dell CTO語る
2023年9月29日掲載:デルが手掛けるAIビジネスの4本柱 - 開発者中心のAI活用で社内のDXにも注力
2024年1月5日掲載:DXソリューションを具現化するためのファウンデーションとして機能したい - デル・テクノロジーズ 大塚社長

  • デルが掲げる4つのAI戦略

    デルが掲げる4つのAI戦略

「AI in」は、同社の製品やソリューションの中にAIを組み込むという戦略だ。Dell OptimizerやPowerEdgeサーバなどは、すでにAIを内蔵したポートフォリオを拡充している。

「AI on」は顧客のAIワークロードをデル製品の上で稼働させる戦略である。AIに最適化ソリューションで、ワークロードの構築を支援する。

「AI for」は自社内でのAI活用を進める取り組み。特にIT部門でのAI活用が進んでいるようで、生成AIを用いたソースコードの生成により、開発スピードと品質の向上を図っているという。営業資料の作成にも、一部生成AIを取り入れているそうだ。

「AI with」では、パートナーとのエコシステムを拡大する。企業やアカデミアなど、多くのパートナーを巻き込みながら協業を含めて生成AIの活用を加速する。

Ajaz氏は「アジア、特に日本のお客様はソリューションの品質に対する期待が高い。すべてのものがトップクオリティであることを求めている。生成AIも決して完ぺきではないが、企業が責任をもって生成AIを活用できるよう当社は支援する」と語っていた。