米Zed Industriesは1月24日(現地時間)、コードエディター「Zed」のオープンソース化を発表した。エディターはGPLライセンスの下で、サーバーサイドのコンポーネントはAGPLライセンスで提供され、改善のコミュニティへの還元を保証している。UIフレームワークのGPUIはApache 2ライセンスで配布され、オープンソースの精神を維持しつつ、より広範な利用と商用の可能性を広げる戦略的なプロジェクトになっている。

2022年にコードエディター「Atom」の開発が終了した後に、GitHubでAtomの開発チームを率いていたネイサン・ソボ(Nathan Sobo)氏が「Atomの精神的後継」として、Zedの開発を開始した。現在、macOS用のベータ版がリリースされている。

Atomは柔軟性と拡張性に富み、自由なカスタマイズが可能なエディターとして人気を博し、活発な開発者コミュニティを形成した。しかし、Electronフレームワークを使用していたため、モダンなPCの性能を十分に発揮できないなどいくつかの問題に直面していた。Zedでは、モダンな開発環境に求められるパフォーマンスと安定性を優先してRustを採用しており、コピーオンライトのデータ構造、非同期プリミティブを使用してCPU負荷の高いタスクをメインのスレッドから移すなど、Atomのようなシングルスレッドのエディターでは不可能だった応答性の高さと安定動作を実現している。他にも、高度な言語対応、信頼性の高いコラボレーション機能といった特徴を備えている。今後は、拡張性と柔軟性に焦点をあてた改善を進める計画で、オープンソース化はその第一歩である。

Zedは収益モデルとして、独自のエディターの販売ではなく、開発者の生産性を高めるエディターとシームレスに統合されたサービスの有料提供を計画している。例えば、チームでソフトウェアを議論、計画、作成するためのChannelsという仮想スペースがある。現在は無料で利用できるが、正式版では有料化される予定だ。また、GitHub Copilotをサポートするなど近年の生成AIの進展を積極的にとり入れており、AI機能の強化とサーバーサイドの処理能力の提供も収益化の手段として重視している。ソボ氏は「将来的に商業用や企業向けにプロプライエタリ製品を提供する可能性があるが、プロプライエタリなコードはオープンソースのコードに対してごく一部にとどめるつもりだ」と述べている。

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