茨城県つくば市、筑波大学、関東鉄道、KDDIは、国土交通省公募の令和4年度「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転実証調査事業)」に採択された。これにより、アイサンテクノロジー、ティアフォー、SOMPOリスクマネジメント、損害保険ジャパンを含めた計8者は、自動運転バスの走行実証を筑波大学で実施中だ。
筑波大学構内の道路を自動運転バスが走行
今回の実証実験は1月9日から30日まで実施し、22日以降は一般の乗客も利用可能となる。筑波大学キャンパス周辺の6つのバス停を自動運転の循環型バスが巡るというもの。1周約4キロメートルのルートを30分ほどで走行する。車両はレベル2(ハンズオフ)に相当する走行に対応する。実証期間は1日に6便が運航し、乗車料金は無料。
実証に使用するのは、自動運転車両「GSM8」。時速約20キロメートルで走行可能な、グリーンスローモビリティだ。ドライバーとオペレーターを含め、9人まで乗車できる。周囲の車や人を認識して加減速を行うのはシステムが対応するが、緊急時の回避などはドライバーが対応する。
車両に搭載する高精度3次元地図データには、走行経路や横断歩道・停止線の位置、走行速度などを事前に入力している。センサーとして使用するLiDARは、レーザー光線などを照射し反射する光をもとに、対象物の距離や形などを認識する。
今回の実証では、自動運転バスが安全に運行できるかを技術的に確認するほか、自動運転バスが大学構内を走行することによる住民への受容性についても検証する。
自動運転バスの内部を写真で紹介
車両に取り付けたセンサーが物体を検出すると、システムが自動で加減速を行う。その様子は社内のモニターに常時投影され、確認できる。
なお、自動運転バスが通る筑波大学構内のルートは、私道と公道の両方を走行する。歩行者や自転車、他の一般車両なども多数通る。死角となり得る交差点や横断歩道には車体とは別にセンサーを設置して、車内からその様子を確認できる「路車協調」の仕組みを取り入れている。
今回の実証では自動運転システムと路車協調システムは連携せずにそれぞれ稼働するが、将来的には両システムが連携しながら走行することも視野に入れているそうだ。
ハンズフリーで運賃支払いまで完了する仕組みも検証中
自動運転の実証と合わせて、つくばスマートシティ協議会では「ハンズフリーチケッティング」の実証にも取り組んでいる。これは、スマートフォンアプリとBluetoothを活用して、カバンやポケットから何も取り出さずにバスの乗降と運賃支払いを可能とする仕組みだ。
まず、専用のスマートフォンアプリ「つくロケ」を立ち上げてバス停に近付くと、バス停に設置したBluetoothビーコンとスマートフォンが通信してユーザーの現在地を把握する。そのままバスに乗り込むと、バス内のBluetoothビーコンが乗客を認識して、ユーザーがバスに乗り込んだことが分かる。その後に、好きなバス停で降りることでバス停のBluetoothビーコンが下りたことを認識する、といった流れだ。
今回の自動運転バスは無料で利用可能なため、実際に運賃を支払うことはないが、乗客がどこから乗り、どこで降りたのかを確認するシステムについて検証する。なお、将来的には大学構内の施設や周辺の店舗などとも連携して、「ポケットからスマートフォンを取り出さずに移動するだけで決済まで完了する仕組み」の構築を目指すとのことだ。