2023年12月6日から8日まで東京ビッグサイトでは、環境問題をはじめ社会課題の解決を図るためのさまざまな情報を発信する展示会「SDGs Week EXPO」が開催された。そして同展示会内の環境総合展「エコプロ(第25回)」にて、セイコーエプソンは、現在開発が進む新型の乾式オフィス製紙機「新型PaperLab(プロトタイプ)」などを展示した。

今回が世界初公開となる新型機プロトタイプのお披露目に際し、エプソンは同社ブースにおいて記者発表会を開催。同じく開発中の「新型PaperLab専用シュレッダー」のプロトタイプ、および現在販売中のモデルから新たな改良を加えた「PaperLab A-8000 リフレッシュモデル」のプロトタイプを報道陣向けにお披露目した。

  • 初公開された新型PaperLabプロトタイプ機

    エコプロ2023で初公開された新型PaperLabプロトタイプ機

紙の再生による“資源循環”で環境貢献へ

エプソンは創業以来、「省・小・精」(より効率的に・より小さく・より精緻に)をコンセプトに、顧客に新たな価値をもたらす製品・サービスの提供を続けてきたとのこと。そして環境配慮に対する関心が高まる現在では、“『省・小・精』から生み出す価値で人と地球を豊かに彩る”とのパーパスを策定し、持続可能な社会の実現に向けた動きを見せている。併せて同社は、2050年にカーボンマイナスと地下資源消費ゼロを達成することを目指した「環境ビジョン2050」を掲げるなど、具体的な活動も始動しているという。

そしてエプソンは新たな環境貢献方法の提案として、オフィスで使用した紙を再生することで“資源循環”を実現する乾式オフィス製紙機「PaperLab」を開発。2016年に初めて商品化した同製品は、官公庁や自治体をはじめとするさまざまな顧客の間で利用が広がっている。同製品がもたらすメリットには、紙の廃棄量を減少させる点に加え、紙の購入や使用済みの紙の処理に際して必要となる輸送の頻度を減少させることで、CO2排出量の削減につながることが挙げられる。

また、水を極力使用せずに紙を繊維として価値ある形に変え、結合や成形によって高機能化を行う独自技術「ドライファイバーテクノロジー」を応用した紙の再生であるため、機密情報を含む紙であっても、1度繊維にしてから再生することで情報漏洩リスクを限りなく低く抑えることができるとする。

導入や利用のしやすさを向上させた新プロトタイプを公開

そして今回エプソンは、実際にPaperLabを活用する顧客などからのフィードバックをもとに改善を施した新型PaperLabのプロトタイプを公開した。同プロトタイプは、2022年に行われた「エコプロ2022」で紹介されたコンセプトモデルの特徴を継承しながら、細部を商品化に向けたさらに進化させたもの。また現在もさらなる開発が進んでおり、2024年春ごろから実証実験を開始した上で、2024年秋の商品化を目指すとしている。

新型機で大きく改善されたのが「導入のしやすさ」だ。新プロトタイプでは、サイズのうち高さ・奥行き方向を削減することで、現行のPaperLab A-8000から体積比で50%近く小型化。また導入コストについても現行品から半分に低減できるよう開発を進めているとのことだ。

  • 体積比で約50%の小型化を実現した新型プロトタイプ

    体積比で約50%の小型化を実現した新型プロトタイプ。プレゼンテーションは開発責任者の山中剛氏が行った

さらに機能面での改善として、現行品ではPaperLabに投入する古紙について、その素材情報をあらかじめ機器の設定に反映させる必要があったという。しかし新製品では、機器に内蔵されたセンサによって古紙の材質を自動で判定し、その情報に応じた処理を行う。そのためさまざまな用紙に対応が可能で、オフィスで使用する紙に変更が加わった場合でも、新たな設定作業をせずに紙の再生を行えるとする。

加えて、新プロトタイプの開発では環境性能の向上も実現された。具体的には、紙の再生に用いる結合剤を天然由来のものに変更した上、紙の繰り返し再生も実現。何度も再生しても物性を維持できるようになったことで、より環境負荷を低減させることができるとしている。

日々の利用で環境貢献を実感できる仕掛けとは?

また今回の発表にあたっては、PaperLabにおいて再生紙の原料となる古紙を裁断する専用シュレッダーも公開。機密情報を取得できないサイズに細分化するシュレッダーの開発により、情報漏洩リスクを向上させることはもちろん、PaperLabから離れた場所に設置したシュレッダーに紙片を蓄積し、細分化された状態でPaperLabのもとへと運ぶことも可能になる。これにより、複数フロアにわたるオフィスでの利用や、図書館などの各施設にシュレッダーのみを設置して紙片を収集する“地域一体型”のPaperLabの利用など、利用の幅がさらに広がるとする。

  • PaperLab専用シュレッダー

    こちらも初公開となったPaperLab専用シュレッダー

そしてPaperLabおよび専用シュレッダーには、液晶画面を搭載。この画面には、同製品を用いて再生した紙の量に加え、それらの再生によって削減されたCO2や木材、水の量として環境効果換算値が表示されるといい、PaperLabの使用による環境効果を利用者に実感させるための仕掛けになっているとのことだ。

  • PaperLab新型機とシュレッダーには液晶画面が搭載され、環境貢献量がわかりやすい形で表示される

    PaperLab新型機とシュレッダーには液晶画面が搭載され、環境貢献量がわかりやすい形で表示される

エプソンはPaperLabによる環境貢献コンセプトを「PaperLabが顧客同士をつなぎ、環境貢献の輪が広がる世界」を実現していくことと定め、紙の循環を通じた環境貢献価値を多くの顧客に実感してもらうことを目指しているとする。そしてそれらの実現に向けて、PaperLabを活用した新たなソリューションの誕生に繋げていくとともに、利用の拡大を目指すとしている。

  • 紙の再生のデモンストレーション

    記者発表会では紙の再生のデモンストレーションが行われた