【2024年をどう占う?】答える人 東日本旅客鉄道社長・深澤祐二

新幹線で新ビジネス 高輪は「未来への実験場」へ

 ─ 東日本旅客鉄道社長の深澤祐二さん、鉄道需要の見通しをお願いします。

 深澤 コロナ禍を通じてビジネスの在り方、働き方、生活の在り方が大きく変わりました。特にビジネス関連の定期はコロナ前比8割、新幹線は9割です。ビジネスが減った分、インバウンドを含めた観光で収入確保をしていく必要があります。

 そのインバウンドも東京・京都・大阪のゴールデンルートに集中しています。これを我々のエリアである東北にも取り込んでいきたいと。そこで東日本大震災からの復興支援という形で復興ツーリズム団体も立ち上げました。

 ─ もともと東北は自然や文化、食が豊富ですね。

 深澤 はい。ですから、その団体には国、自治体、旅行会社、航空会社、企業などにもメンバーになっていただいています。修学旅行や海外の方、あるいは企業の研修旅行の方などにお越しいただき、沿岸に建てられた復興施設などを巡り、かつ東北の魅力を味わっていただきたいと思っています。

 ─ 24年3月に北陸新幹線が敦賀まで延伸開業します。

 深澤 北陸新幹線が金沢まで開業したときはすごい北陸ブームが起きました。こういったブームをもう1回起こそうと準備を進めています。東北では山形新幹線で「E8」という新型車両も来春から導入します。

 ─ 地方振興につながりますね。新幹線といえば「荷物新幹線」が話題になっています。

 深澤 コロナでお客様がいなくなったスペースを物流に使おうと。新鮮な魚介類や野菜、花などです。これらはトラックや飛行機で運んでいたのですが、新幹線の方が時間もかからず、生き物へのストレスもかかりません。例えば、朝、函館で捕れたイカを、その日のうちに生きたまま東京駅にまで運んでくることができます。

 24年の物流問題の解決に対しても貢献できると。また、23年は車両センターから多量荷物輸送の実証実験を行いましたが、24年以降、本格的にビジネスにしていきます。新幹線を丸ごと「荷物新幹線」として活用することも検討しています。

 ─ 可能性が広がりますね。都心では「高輪ゲートウェイシティ」の再開発があります。

 深澤 そうですね。既にJR山手線の高輪ゲートウェイ駅の前にはビルが建ち上がってきました。25年3月がまちびらきですが、当社はここを「未来への実験場」と位置付けています。

 スタートアップを含めた企業や大学など、様々な人が集まって、いろいろなチャレンジを実験する場になります。我々は駅や鉄道といった様々なフィールドを持っていますから、それらと連動した実験場を作っていきたいと思っています。