シーエーシー(CAC)は12月26日、画像認識AI(人工知能)を使用して、養殖魚に触れることなく体重を推定・データ化して資産価値を算定するという「魚体鑑定システム(仮称)」を開発し、MVP(Minimum Viable Product、実用最小限の製品)版の提供を開始した。

  • システムのイメージ

生産量・生産額が減少する養殖業

養殖業を含む水産業は地域経済を支える重要産業である一方で、近年は生産量・生産額の減少、従事者の高齢化や後継者不足、コスト増加などによる生産性の低下といった課題を抱えているといい、特に養殖業では餌代の高騰と魚価の低迷に直面しているという。

こうした社会課題を踏まえて同社は、長崎県における産学官連携のプロジェクトである「ながさきBLUEエコノミー」に参画し、デジタル化した養殖場での養殖魚の資産価値算定と算定価値を担保にした金融機関などからの資金調達の仕組み作りに取り組んでいるとのこと。

この取り組みでは、長崎総合科学大学、十八親和銀行、フィンデクスの各者および、養殖業である昌陽水産の協力の下で、AI/スマート・カメラを使用し水中カメラで撮影した養殖魚の体重を把握する実証実験(PoC)を実施して検証を進め、新システムはこの実証実験の成果を反映したものという。

養殖魚の体重を推定し、体重の分布を計算してデータ化

同システムは、生簀を水中カメラで撮影した動画から画像認識AIを用いて個々の養殖魚の体重を推定し、体重の分布を計算してデータ化する。この体重分布にキロ単価と尾数を掛け合わせ、生簀内の魚の時価(公正市場価値、FMV: Fair Market Value)を算出する。

同システムでは魚を網ですくうなどしないため、魚体を傷付けることが無いという。 また、動画をシステムにアップロードした後の個々の魚の体重の推定や様子の確認、時価の算定などはスマートフォンで操作が可能とのこと。なお、同システムの分析対象は、マグロのような大型ではなく小~中型の魚類を想定している。

同社は同システムについて、養殖魚の体重推定による成長度の把握を容易にすると共に、生簀の資産価値算定にも一定の根拠を与えられると考えている。

また、これらのデータを使用して養殖魚をABL(Asset Based Lending: 動産担保融資)の担保にできれば、養殖業の資金調達の円滑化に貢献できる可能性があるという。

他地域へ展開

今後同システムは、長崎でのモデル確立後に他地域への展開も図る。

機能面では、尾数カウントAIの開発や歩留まり率実績・予測機能の実現により自動化を図ると共に、蓄積した魚の体重データと水温の関係から最適な給餌量への調整による給餌削減など、養殖業の効率化と利便性の向上に役立つ機能を追加していく計画だ。

また、同システムで算定した時価を実際に養殖業従事者の資金調達へと活用するための検討を、金融機関と共に進めていくことも予定している。

同社は、これらの取り組みによって地域に根差した水産業の再生と地域活性化に貢献すると共に、この取り組みを収益事業としても成立させることを目指していく。