ミルボンは12月22日、くせ毛は直毛と比較すると毛髪内のタンパク質が動きにくい状態になっており、このことがくせ毛の整えにくさに関与していることを明らかにすると同時に、くせ毛のタンパク質の動きやすさを向上させ、毛髪の形状を整えやすくする成分を特定したことを発表した。

同成果は、ミルボンと椙山女学園大学の上甲恭平名誉教授の共同研究チームによるもの。詳細は、11月27~28日に京都で開催された「2023年 繊維学会秋季研究発表会」にて発表された。

髪のまとまりは、見た目の印象に大きな影響を与えるため、くせ毛によるうねりが原因で髪がまとまらないことに悩み、それを解消したいとする人は昔から多い。そこでミルボンでは、くせ毛のまとまりにくさが毛髪内部の水分分布に起因することに着目し、その分布を均一に改善する成分を見出してきた。また、くせ毛のまとまりにくさが日々の美容習慣の積み重ねで徐々に悪化する現象も見出しており、効果的なヘアケア技術の開発を進めてきたとする。

現在、髪のうねりをまっすぐに整える代表的な美容技術として、ストレートパーマ、ストレートアイロンを用いたセットなどがある。これらの方法は高いストレート効果を得られるが、髪にダメージを生じやすいことが課題だ。

一方、髪に負担をかけずにうねりを整える方法としては、洗髪後の濡れた髪を手で整えながらドライヤーで乾燥するハンドブローが広く用いられている。ハンドブローは日々の手入れ習慣に取り入れやすく、かつダメージを心配せずにうねり緩和効果が得られることが優れた点だが、その効果が弱いことが課題であり、くせが強い毛髪をハンドブローのみでまっすぐに整えることは一般的に困難とされている。そこでミルボンでは今回「くせが強い毛髪はハンドブローで整えにくい」現象に着目し、その原因と解決策を見出すことに着手したという。

  • 直毛とくせ毛の、ハンドブローによる整えやすさの違い

    直毛とくせ毛の、ハンドブローによる整えやすさの違い。直毛は洗髪後にハンドブローを行うとまっすぐ整うが、くせ毛はまっすぐ整わない(出所:ミルボンプレスリリースPDF)

今回の研究では、ハンドブローで髪を整えにくい原因を解明するため、毛髪の主な構成成分であるタンパク質が注目された。毛髪を構成するタンパク質は長いひも状のランダムな構造で、このタンパク質には、水の影響を受けやすいものと受けにくいものがある。

その中で、毛髪の整えやすさには主に水の影響を受けやすいタンパク質が関与しており、このタンパク質は髪の中で完全に固定されているわけではなく、ある程度の“動きやすさ”をもって存在している。直毛とくせ毛では毛髪形状の整えやすさが異なることから、このタンパク質の動きやすさが異なる可能性があると推測したという。

そこで、直毛とくせ毛のタンパク質の動きやすさを調べるため、「示差走査熱量測定」を行い、緩和エンタルピー量(ΔH)を測定したとのこと。毛髪における緩和エンタルピー量は、水の影響を受けやすいタンパク質の“構造における歪み”であり、この歪みが大きいほどタンパク質同士の相互作用が強く、動きにくい状態であるとされている。そして測定の結果、くせ毛は直毛に比べてタンパク質が動きにくい状態になっていることが突き止められた。

  • 直毛とくせ毛の、タンパク質の動きやすさの違い

    直毛とくせ毛の、タンパク質の動きやすさの違い。(A)緩和エンタルピー量(ΔH)の測定結果(ΔHが大きいほどタンパク質が動きにくい状態であることを示す)。(B)ΔHの結果に基づく、毛髪を構成するタンパク質のイメージ(出所:ミルボンプレスリリースPDF)

  • 示差走査熱量の測定結果例

    示差走査熱量の測定結果例。緩和エンタルピー量(ΔH)は、吸熱ピークの面積値として求められる。緩和エンタルピー量(ΔH)は、吸熱ピークの面積値として求められる(出所:ミルボンプレスリリースPDF)

それを受けて研究チームは、くせ毛のタンパク質の動きやすさを向上させられれば、ハンドブローなどの穏和な条件で毛髪の形状を整えやすくなると考察し、6種類の成分からスクリーニングを行った。その結果、ヘアケア成分「F」は、ハンドブローによりくせ毛の形状を整えやすくする効果を有することが見出されたとする。また、この時にタンパク質の動きやすさの確認を行ったところ、ヘアケア成分Fの処理によって、くせ毛のタンパク質の動きやすさが向上していることが確認できたとした。

  • ヘアケア成分のスクリーニング結果

    ヘアケア成分のスクリーニング結果。濡れた毛髪に各成分を処理後、ハンドブローが行われた。ヘアケア成分Fを処理した毛髪は形状を整えやすくなったとした(出所:ミルボンプレスリリースPDF)

  • タンパク質の動きやすさに対する成分Fの効果

    タンパク質の動きやすさに対する成分Fの効果。ヘアケア成分Fを処理したくせ毛は、タンパク質の動きやすさが向上していることが確認された(出所:ミルボンプレスリリースPDF)

ミルボンでは、今回の研究成果をもとに、くせ毛の形状を整えやすくし、まとまりを高めるヘアケア製品の開発を目指すとしている。