Box Japanは12月7日、報道関係向けに「Box AI」のベータ版提供開始に伴う記者説明会を開催した。
Box Japanは、OpenAIのChatGPTを代表とする革新的な生成AIの技術を活用した製品やサービスが台頭し、日本企業での利用が増えてきていることから、企業の求める高いセキュリティ、コンプライアンス、プライバシーに準拠した新機能「Box AI」を、2023年11月からベータ版として提供開始している。
今回の説明会には、Boxの製品戦略担当バイスプレジデントであるランド・ワッカー氏が来日し、今年10月に米国で開催した年次イベント「BoxWorks 2023」で発表した最新のアップデートについてAI関連機能を中心に紹介した。
情報探索やコンテンツ作成を行える「Box AI」
まずワッカー氏は「AIの新時代が幕を開ける」ということについて説明した。
「大規模言語モデルのAIの新時代は企業のコンテンツに大変革をもたらします。今までAIは1つずつユースケースを解決してきましたが、新たなAIモデルは人間レベルの理解力で一般的な問題を解決できるようになっています」(ワッカー氏)
同氏曰く、この新時代は1年ほど前から始まったものだそうだが、過去20年間で誕生したさまざまな新技術と比較しても、「AIの進歩」に関しては、とりわけ大きな変革が見られているという。
そのような潮流の中で、日本企業でも生成AIの利用が増えてきていることを背景として誕生したのがBox AIだ。
このBox AIは、OpenAIやMicrosoft、Googleと協力関係を築くことによってプラットフォームを実現しているもので、ユーザーが必要な時に必要とする正確な情報を探し出すのを支援するという特徴を持っている。
プレビューで閲覧する際に、ドキュメントに関する質問をしたり、スプレッドシートからの重要な情報を引き出したり、プレゼンテーションを要約したりすることが、すべてワンクリックで行うことができるという。
それに加えて、ユーザーによる迅速なコンテンツ作成と、生産性の向上を支援するという特徴も兼ね備えている。ユーザーは、簡単な操作で、原稿やニュースレター、ブログ記事といった異なるトーン、長さ、スタイルの原稿を作成したり、Boxに格納されている情報を元にしたアジェンダ、マニュアル、報告書を作成したりすることができるという。
ワッカー氏は、「生成AIは、Boxが提供するすべての製品や、すべての分野において役立つものとなり、企業が活用する情報まわりの業務を大幅に効率化できます。今後は、日本のパートナーとの連携により、日本におけるAIの能力を高めていきたいと考えています」との展望を述べた。
Boxの好調を支える「Enterprise Plus」
続いて登壇したBox Japanの専務執行役員である佐藤範之氏は、Box Japanのビジネス概況について紹介した。
まず、ビジネスの概況については、「Boxがコンテンツ・コラボレーション市場で売り上げ金額1位」となっているという。特に製造・金融・通信・サービス・建設・公共の6業種においては、ベンダー別の売り上げ金額シェアで、2023年度の予測の1位を獲得している。
このように好調なBox Japanのビジネスを牽引している理由としては「Enterprise Plus」の存在が大きいと佐藤氏は語る。
「われわれは、コンテンツ管理基盤のプラットフォーマーとして、コンテンツを保管するだけではなくて、プロセス全域に対して、必要な機能を1つのプラットフォーム上で備えているというベンダーです」(佐藤氏)
Enterprise Plusとは、コンテンツクラウドのパワーを1つのシンプルなパッケージで利用できるというサービスで、高度な脅威検知とインテリジェントなアクセス制御でデータ損失を防止する「Box Shield」や、シンプルでセキュアな電子サインをコンテンツとともに利用および管理できる「Box Sign」などの機能が含まれている。
佐藤氏は、「Enterprise Plusを購入いただければ、攻めの観点だけでなく、守りの観点も両立させることができるというところで支持されています」と、説明した。
今回ワッカー氏から説明されたBox AIは、このEnterprise Plusの機能の1つとして加わることになる。このBox AIの加入によって、さらなる成長加速を期待しているという。
Box社員のBox AIのユースケース
また、佐藤氏は、Box社員のBox AIのユースケースを紹介した。主にBox社員がBox AIを活用する場面としては以下の2つが挙げられるという。
- 膨大な資料の要約
- シーンに応じた文章作成
膨大な資料の要約については、「会社の経営状況の概要を簡潔にまとめて」や「共有リンクのセキュリティの設定箇所を教えて」というようにBox AIに指示を出すことでIR資料などページ数が多いコンテンツから重要な点を短時間で把握することができるという。
また、「○○さんの意見は?」などの具体的な質問にも回答くれるほか、顧客の了承なしにAIモデルの学習に利用されないため、機密文書に対してもセキュアに活用することができるという。
シーンに応じた文章作成については、メールやSNS投稿文など、用途に合わせてBox AIが原稿作成を行ってくれることで、時間短縮に成功しているという。
「Boxについて」など、入れてほしい要素をBox AIに指示すると、素案をすぐに作成し、作成された文章に対して修正指示を投げることで文章をブラッシュアップしていくことも可能だ。
実際に最後にBox AIの先行利用企業として登壇した野村総合研究所 DX基盤事業本部 シニアチーフエキスパート 村田龍俊氏も、プレゼンテーションの「最後のまとめ」をこの機能を活用して作成していた。
Box AIを活用して村田氏が作成したプレゼンテーションの要約は以下の通り。先行利用企業代表として村田氏は、内容や要約のされ方にも納得の様子だった。