【国土交通省】環境保全で報告書 リニア着工糸口となるか

リニア中央新幹線・静岡工区の環境保全策を議論する国土交通省の有識者会議は11月、トンネル掘削工事について「環境への影響を最小化することが適切だ」とする報告書案を大筋で了承した。

 工事主体のJR東海に対しては、周辺環境の継続的なモニタリングと保全措置を求めた。会議を立ち上げたのは22年6月。会合の開催は14回に上り、鉄道局幹部は「ようやく一区切りがついた」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。

 報告書案では、工事によって水生生物がすむ沢の水の流量が減るのを防ぐため、断層とトンネルが交差する箇所に地盤を固める薬液を注入する対策を提示。沢の流量や水質の計測、生物の生育状況の調査を継続的に行うことも求めた。工事で発生した、基準を超える重金属を含む残土の置き場に関しては、流出を防ぐために二重遮水シートで封じ込める対策を講じる。周辺の植生を考慮し、置き場の地上部分の緑化にも取り組む。

 JR東海の宇野護副社長は「本当に充実した内容になった。この方針に沿って(対策を)進めていければと考えている」と納得の様子。一方、静岡県の森貴志副知事は「まだまだ議論を行わなければならない論点がある」と不満顔だった。宇野氏は「県がいろいろなご懸念をお持ちなのは承知している」とした上で、報告書をベースに県と議論を続ける意向を示す。

 静岡工区を巡っては、県がトンネル掘削による水資源などへの影響を懸念し、着工を認めていない。東京─名古屋間の27年開業は困難となっており、その時期が見通せない状況だ。

 斉藤鉄夫国交相は「報告書を踏まえ、課題解決に向けた取り組みを着実に進めることにより、早期整備を促進していきたい」と述べた。

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