ガートナージャパン(Gartner)は12月4日、「ソフトウェア・エンジニアリングのハイプ・サイクル:2023年」を発表した(米国では11月28日(現地時間))。これによると、AI(人工知能)拡張型ソフトウェア・エンジニアリング、AIコーディング・アシスタント、プラットフォーム・エンジニアリングなどのテクノロジーが2~5年以内に企業での主流の採用になるという。

  • ソフトウェア・エンジニアリングのハイプ・サイクル(2023年) 出典: Gartner

これらのテクノロジーは、過度な期待のピーク期に向かって上昇しつつあるという。 今後数年間に、革新的なイノベーションがソフトウェア・エンジニアリングにもたらすと思われるベネフィットは、企業のビジネスモデルに多大な影響を与え、新たな戦略や戦術を促進する可能性があるとのこと。

AIコーディング・アシスタントに関して、2027年までに企業のソフトウェア・エンジニアの50%が、機械学習を活用したコーディング・ツールを使用すると同社は見ている。ファウンデーション・モデルに基づくコード生成プロダクトは、複雑でより長い提案を生成できるため、開発者の生産性が大きく向上するという。

ほとんどの組織では、ソフトウェアに対するニーズが開発者のキャパシティを上回る状態となっているため、既存の開発者は限界に達しており、迅速に機能を構築できず、仕事に満足感を得ることができないと同社は指摘する。

AIコーディング・アシスタントは、開発者の生産性と満足度の向上を促進するアクセラレーターとして台頭しつつあるとのこと。AIコーディング・アシスタントは、日常的なタスクを処理することで、開発者がより価値の高いアクティビティに注力できるようにし、これにより、組織は既存のチームでより多くの機能を迅速に提供可能になると同社は見る。

AI拡張型ソフトウェア・エンジニアリングに関して、ソフトウェア開発ライフサイクルには、機能テストや単体テスト、ドキュメント作成など、作業内容が定型的でルーティン化し、かつ繰り返し行われるようなタスクが含まれるが、AI拡張型ソフトウェア・エンジニアリング・ツールはこれらを自動化するという。これによりソフトウェア・エンジニアは、機能創造のような価値の高い活動に時間、エネルギー、創造性を集中できるとしている。

AI拡張型ソフトウェア・エンジニアリングを使用する利点には、ソフトウェア開発者の生産性の向上および、ソフトウェア開発者が開発に専念できることで、満足度が向上する点が挙げられるという。

これらに加えて、優先度が高く複雑で不確実なビジネス・イニシアティブに、ソフトウェア・エンジニアリングのケイパビリティを割り当てられること、また自己回復テストと明白でないコード・パス (問題の検出や修正の提供、テスト・シナリオを自動生成する) を品質チームが開発するための支援ができることなどを、同社はメリットとして挙げる。

同社は、2026年までに大規模なソフトウェア・エンジニアリング組織の80%が、アプリケーション・デリバリのための再利用可能なコンポーネント、ツール、サービスを提供する社内プロバイダとして、プラットフォーム・エンジニアリング・チームを結成すると見る。

同社シニア ディレクター アナリストの片山治利氏は、「日本でも近年、ソフトウェア開発の内製化の機運が高まりつつありますが、開発の在り方 (手法や採用するテクノロジーなど) が従来とは大きく変わり始めていることを認識していない日本企業のIT部門やソフトウェア・エンジニアも少なくありません。ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーは、本ハイプ・サイクルを活用することで、今後のトレンドを理解し、イノベーションがソフトウェア・エンジニアリング・エコシステム全体にどのような影響を及ぼすかを把握できます」とコメントしている。