9to5Macは11月16日(現地時間)、「Apple announces that RCS support is coming to iPhone next yearc」において、Appleが2024年にiPhoneにおいて、RCS(Rich Communication Services)メッセージングを標準サポートする予定と伝えた。Appleの広報担当者の声明文では、来年後半にiPhoneにRCS Universal Profileのサポートを追加し、iMessageと並行して利用できるようにすると述べられている。

RCSは携帯電話におけるインスタントメッセージング機能の一種で、テキストメッセージの送受信が可能なSMSや、画像などのマルチメディアコンテンツを添付できるMMSなどに代わる規格としてGoogleなどが推進している。SMSやMMSとの大きな違いとしては、ファイルの送受信や位置情報の共有、既読通知機能などを備えている点が挙げられる。

iPhoneは現在、Appleが開発した独自のメッセージングアプリとして「iMessage」を搭載している。iMessage同士であればファイルの送受信や既読通知などを行えるが、Androidなどの他の種類のデバイスと通信する場合はSMSまたはMMSに切り替わるため、利用できる機能が著しく制限されることになる。そのためGoogleでは、Appleに対してiPhoneでRCSをサポートするべきだと訴えてきた。

Appleの広報担当者の声明には、RCSを標準サポートしたとしても、iMessageは依然として利用可能であり続けることが明記されている。したがって、iPhoneのメッセージング機能はこれまで通りiMessageが主体であり、Androidなどのデバイスと通信する場合のみ、SMSやMMSに代わってRCSが使われるようになる可能性が考えられる。

9to5Macは、Appleが従来の方針を覆してRCSのサポートを決定した背景には、欧州連合(EU)が7月に採択した「The Digital Markets Act(DMA: デジタル市場法)」が関連しているとの見方を示している。この法案において、EUは、Appleを独占的なプラットフォームの運営者である「ゲートキーパー」に指定しており、対象のサービスに関してDMAが定める義務を順守するための順守報告書の提出を求めている。本稿執筆時点で、iMessageは対象サービスに含まれていないが、Appleが閉鎖性を維持すると、追加で指定される可能性もあるとみられている。

少なくとも、iPhoneによるRCSのサポートはユーザーにとって利便性を向上させる喜ばしいアップデートと言えるだろう。ただし一部で配慮すべき部分もある。例えば、iMessageのメッセージはエンド・ツー・エンドで暗号化されるが、RSCの場合は規格そのものはエンド・ツー・エンドの暗号化をサポートしておらず、個別のアプリで対応する必要がある。これはAppleがRCSのサポートに後ろ向きだった理由の一つとされている。