日本電信電話(以下、NTT)は11月9日、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の要素技術であるAPN(All-Photonics Network)を活用して、現場の建設機械と遠隔操作システムを接続して用途の異なる2種類の建設機械を用いたユースケースにおいて、違和感のない遠隔操作が可能であることを確認したと発表した。
大容量・低遅延・確定遅延の特徴を持つIOWNにより現場の映像などを低遅延で伝送することで、遠隔地にいるオペレーターが現場の状況を正確に把握できるようになり、現地での作業と近い環境を実現できたという。同社は今後について、建設機械の遠隔操作を活用することで、オペレーターの移動時間の削減とや業務の効率化、危険を伴う現場作業の削減による安全性の向上が期待できるとしている。
実証では、実際の工事現場の建設機械を遠隔拠点のオフィスなどから遠隔操作することを想定し、遠隔操作用のコックピットをNTT武蔵野研究開発センターに、建設機械を遠隔地の現場に設置して、2拠点間をAPNで接続して遠隔操作し遠隔で現場環境の確認を実証する、2つのユースケースを想定したネットワークを構築している。
無線と組み合わせて油圧ショベルを遠隔操作するユースケースでは、コマツ社製の油圧ショベルを千葉県美浜区のコマツIoTセンター東京に設置し、コマツとEARTHBRAINが共同開発した遠隔操作システムを利用して、APN経由での遠隔操作しリアルタイムで現場環境を確認した。
実証の結果、APNを用いた低遅延化の実現による操作性の向上と、現場での迅速な環境構築による利便性の向上、さらにはさまざまな環境下での利用可能性を確認できたという。また、NTTの超低遅延映像伝送技術を活用し、現場の映像を4Kの高解像度で画質を劣化させることなく伝送し、遠隔地にいるオペレーターが現場の状況を正確に把握した。
もう一方の、End-to-Endでの有線接続で定置式タワークレーンを遠隔操作するユースケースでは、大阪府堺市の竹中工務店西日本機材センターに設置したタワークレーンに対し、タワークレーン遠隔操作システム「TawaRemo」を利用してAPN経由での遠隔操作を確認した。
TawaRemoの映像伝送はジザイエの低遅延映像伝送技術を搭載したリアルタイム遠隔就労支援プラットフォーム「JIZAIPAD」とAPNを組み合わせて、リアルタイム映像伝送を実証している。
実証の結果、熟練の作業者が遠隔操作する際の品質を担保するために許容可能な500ミリ秒以内という遅延値に対して、タワークレーンまでAPNで接続して遠隔操作を実現することで、東京-大阪間の約500kmでも常時許容範囲内の遅延で操作できた。
また、APNの確定遅延の特性を考慮することで、ジザイエが提供する低遅延映像伝送技術におけるバッファ時間の短縮も可能となり、リアルタイム映像伝送に対する有効性が確認できたとのことだ。