横須賀市は、1998年に財務会計システム、1999年に公文書管理システムを導入するなど、20年以上前から行政のデジタル化に対し前向きに取り組んできた自治体だ。そして、2020年からはDX推進をスタート。公務員の意識改革と仕事の効率化を目指し、公文書のデジタル化のほか、ChatGPTの導入も実現している。
9月26日に開催されたオンラインセミナー「TECH+セミナー 2023 Sep. AIで劇的に業務効率を向上させる方法」では、横須賀市 経営企画部 次長 兼 デジタル・ガバメント推進室長 寒川孝之氏が、同市のDXに向けた取り組みについて紹介した。
“公務員気質の壁”に阻まれたDX推進
人口減少に伴い、自治体の職員数減が予想される中、効率的な行政運営はもはや必然とも言える。DXにより行政事務の徹底効率化を目指す横須賀市は、2020年4月1日にデジタル・ガバメント推進室を設立した。しかしながら、DX推進はスムーズにスタートしたわけではなかった。推進室の設立当初について寒川氏は次のように振り返る。
「改革に向けて『いざ出陣』と意気込んでいましたが、市役所の現状は思ったより厳しいものでした。『今のままで良い』『別に困っていない』『昔からこのやり方』という”公務員気質の壁”に阻まれたのです。現場の職員は日常業務に忙殺されて改善が進まず、負の連鎖が生じていました」(寒川氏)
こうした状況を変えるためにデジタル・ガバメント推進室が行ったのは、「やる気のある業務所管課に突撃し、地道に進める」という草の根的な活動だ。現在3年が経過したところだが、徐々に市役所の雰囲気は変わってきているという。寒川氏は「当初はやる気のある部署に突撃していたが、各部局が独自に改革を推進する事例も増えてきている」と説明する。組織全体でDXを進めようという機運が高まってきているところだ。
BPM研修により「システム化に大反対」していた部署でもDXを実現
自治体におけるDX推進の秘訣として寒川氏が挙げたのが、職員の意識改革だ。横須賀市では、職員向けの研修としてBPM(ビジネスプロセスマネジメント)実践ワークショップを行っており、As-Isの把握からTo-Beの構想、そのギャップを解消させていく方法などを学ぶことができる。2020年に総務部と土木部に対して実施したところ、すぐに研修の効果が出たわけではなかったが、それから3年が経ち、ようやく具体的な事例が出てきている。
総務部では、紙決裁による非効率性という課題を抱えていた。以前の公文書管理規程においては、紙の公文書を用いて回議できる、紙の公文書の余白への朱書によって決裁できる、電子メールは印刷しても構わないなどといった”紙決裁の逃げ道”が残されていた。そこで、2023年4月に同規程を改正。受付印を廃止したことにより、回議用紙を使用した紙決裁および紙の公文書の余白への朱書による決裁が廃止となり、システムで行うことが原則として求められるようになった。
一方、土木部は「BPM研修に参加した全員がシステム化に大反対した」(寒川氏)というが、今では職員自らがTo-Beの業務フロー図を書けるようになっている。また実際に、道路の陥没やガードレールの剥がれ、カーブミラーの損傷といった道路に関する市民からの要望を受け付ける仕組みの効率化を実現した。以前は、受付から処理までの手続きは紙で行われており、それらの情報はExcelに手入力するかたちで管理されていたが、現在はGIS(地理情報システム)で一元管理できるようになっている。また、要望を受け付けた後の現地調査を必要なものだけに絞る業務フローに変えたことで、年間約1000時間の業務時間を削減できたという。
