<EC物流最前線>2024年問題とコロナ反動が直撃 競争から共闘時代へ突入か

2023年の通販EC物流業界は、大きな転換期を迎えようとしている。物流の2024年問題に加え、コロナ禍で成長した通販EC市場の反動減の影響を受けている。大手宅配会社が発表した個配送数も減少している。今後の成長戦略を見ると、物流企業同士、サイト構築側との連携が進む。物流業界内の競争から脱却し、共闘の戦略が目的といえる。物流業界の変化とともに、荷主側の見直しも活発だ。2023年度の「ECソリューションマップ物流編」は、2024年問題やコロナ禍の反動などを前提に、宅配や物流代行、物流ソリューション、ロボティクスなどの最新動向を紹介する。物流支援サービスをまとめたカオスマップは、ECのネットメディア「Eコマースコンバージョンラボ」と共同で作成した。

【「物流サービス」カオスマップ】

<反動と成長鈍化が直撃>

3PLや物流代行の動向を取材していると、「コロナ禍の反動」「荷主の成長鈍化」の2点について、各社が共通項目として挙げた。

コロナ禍で日本のEC化率は上昇し、荷主の売り上げは伸長。同時に物流企業は、荷主の成長に合わせて拠点数の拡大や倉庫の拡張を進めた。

アフターコロナになってもEC市場は堅調に伸びていくとの予想は外れ、成長は鈍化。物流企業からは、「昨年の年末あたりから様子が変わってきた」との声が聞かれた。ただ、全ての通販EC企業の成長が鈍化しているわけではなく、成長維持と停滞の二極化がみられるようだ。

荷主の動向に合わせて物流拠点の集約も進む。

アドレス通商、イー・ロジット、エスプールロジスティクスなどは、新拠点や、既存の倉庫に業務を集約している。拠点の減少は一見すると生産性に影響を与えそうだが、各社は集約によって生産性の向上につなげるとしている。

一方、物流企業によっては、収益の改善に向けて荷物量が少ない荷主の整理が進められているという。荷主の整理は、コロナ禍の反動に対応した措置といえるだろう。

また、物流の2024年問題の影響によって、物流倉庫の集荷時間が従来よりも早まっている。倉庫を取り巻く環境は荷主や法整備などによって、今後も変わっていく可能性が高い。

<成長を伴走できる体制>

物流の2024年問題を前に、ECモールによる物流も動きが目立ってきた。

FBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)は、自前の物流インフラや配送の強化を進めている。RSL(楽天スーパーロジスティクス)やヤフーは、2024年問題を踏まえた物流体制に移行しつつある。

こうしたモールによる物流も情勢に合わせて変化しているが、出店者にメリットのある物流サービスの提供が根底にある。物流を手掛けるモールと競合となる物流企業もメリットの訴求は欠かせないだろう。

モール物流との連携も戦略の一つだが、物流企業には荷主の成長に直結した自前のサービスの強化が必要だ。近年、物流サービスは他社との差別化が図りにくくなっているといわれる。一方で、臨機応変な対応が求められる通販EC向けのソリューションは商機があるようだ。倉庫の拡張性や柔軟性、システムの汎用性など、荷主の要望に応えた取り組みが始まっている。

アップル流通、清長では、庫内作業などにおける「現場力」を強みにする。業務品質や対応力を担保する管理能力の高さも荷主の成長と信頼を支える部分だろう。

<大手が中小獲得へ前進>

大手による中小規模の事業者獲得の動きも活発になってきた。

スクロール360は2023年7月に、EC・通販事業者向けの物流代行サービスの「ライトプラン」を刷新し、スタートアップや中小規模の事業者をターゲットに展開を始めた。

SBSホールディングスは、来春にも同社初の通販センターを併設した「野田瀬戸物流センター(仮称)」を開設する。同時に、物流ソリューションを提供するコマースロボティクスと連携し、多数の小規模荷主の業務を集約する「仮想荷主グルーピング」の開始で、中小規模の荷主の獲得を進められるようになった。

これまで大手物流企業は中小規模の荷主への対応が難しかった。システム費用や庫内の作業効率、採算性が合わなかったことが主な理由だ。

こうした大手が中小規模の領域に参入することで、通販EC物流における物流代行の競争はますます激しくなるだろう。

SaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」を提供するフューチャーショップが2023年6月に、物流代行の富士ロジテックホールディングスと連携したほか、SBSホールディングスとコマースロボティクスも2023年10月に連携する。物流代行などは他社とも手を組みながら、競争から共闘の時代に変わりつつあるといえる。