ソフトバンクはこのほど、モバイル通信品質のあり方に関する説明会を開いた。常務執行役員 CNO(チーフ・ネットワーク・オフィサー) の関和智弘氏が登壇し、通信品質を維持させるためのこれまでの取り組みについて解説した。

  • ソフトバンク 常務執行役員 CNO(チーフ・ネットワーク・オフィサー) 関和智弘氏

    ソフトバンク 常務執行役員 CNO(チーフ・ネットワーク・オフィサー) 関和智弘氏

関和氏は冒頭、昨今、通信環境を取り巻く状況が変化していることについて触れた。「当社の通信サービスにおける月間データ利用量は年々増加しており、20GB以上利用しているユーザーの比率は1年で約1.15倍になった。トラフィックが増加傾向にある一方で、コロナ禍で人々の生活スタイルが読みづらい状況になっている」と説明。

  • トラフィックは増加傾向にある

    トラフィックは増加傾向にある

  • ソフトバンクユーザーの月間データ利用量も年々増加

    ソフトバンクユーザーの月間データ利用量も年々増加

同社は増加するトラフィックに対し、5G(第5世代移動通信システム)の周波数の提供拡大によって対策を講じている。5Gサービスの開始以降、サービスエリアの展開に注力しており、2023年9月現在、5Gの人口カバー率は92%、基地局数は7万局を超えた。

  • ソフトバンクの5Gネットワークの整備状況

    ソフトバンクの5Gネットワークの整備状況

そして、ネットワークの整備において、ソフトバンクは「ユーザーの体感」を一番に重視。つまり、アップリンクとダウンリンクのバランスを保ち、“ネットワーク全体でパケ詰まりがない状態を維持する”ことを目指している。

ソフトバンクは具体的にどのようにして、通信の品質を高めているのだろうか。関和氏の説明により、大きく分けて3つの対策を打っていることが分かった。

なぜソフトバンクはつながりやすい? 重視する3つの対策

5Gを「面」で展開

1つ目の対策は、5Gを「面」で展開していること。この面による展開について、関和氏は次のように説明した。

「展開中の5Gは、エリアによっては島のような場所が街中にできてしまう。そうなると、その外側で弱い電波であっても5Gをつかめるようになってしまい、品質の維持が難しくなってくる。当社は、面での基地局の整備を積極的に進めており、基地局をグループ化することでセルエッジ(どの基地局からも遠いため電波が弱いセルとセルの境界)の発生を抑えている」

  • 5Gを「面」で展開するソフトバンク

    5Gを「面」で展開するソフトバンク

輻輳を回避するチューニング

2つ目の対策は、「アンカーバンド」のトラフィックを制御し、輻輳(ふくそう)を回避していること。

同社が提供する5Gモバイルネットワークは、NSA(ノンスタンドアロン)と呼ばれる方式で構成されている。これは4Gのコア装置と5Gの基地局を組み合わせた方式で、まずLTEにつながってから5Gの電波を足し合わせている。切り替わるタイミングのLTEの周波数帯のことをアンカーバンドと呼び、5Gに切り替える際には必ずアンカーバンドに接続する必要があるため、この帯域にトラフィックが集中するケースが多いとのこと。

  • 輻輳を回避するチューニングを実施

    輻輳を回避するチューニングを実施

「アンカーバンドに在圏させるユーザーと、それ以外のLTEに在圏させるユーザーのバランスをとり、アンカーバンドの使い過ぎにならないようにチューニングを細かくかけている」(関和氏)

ビッグデータ×AIで“電波の届き方”を分析

3つ目の対策は、目的の場所に届く周波数を追加していることだ。「電車や屋内のスポットといったような場所は、LTEの電波しか届かずトラフィックが集中して品質劣化が発生しやすい。飛び道具のような対策はないが、電波の届き方の偏りを分析して地道に基地局を追加し、そこに届く電波を増やしている」と、関和氏は説明。

  • 電波の届き方の偏りを分析して届きやすい電波を増やしている

    電波の届き方の偏りを分析して届きやすい電波を増やしている

具体的にはビッグデータを活用した分析を実施。基地局単位のネットワーク側の品質データと、メッシュ単位(100m~1㎞)の端末側の品質データを掛け合わせ詳細を分析し、数あるうちの原因を特定する。また、AI(人工知能)や機械学習も導入して異常メッシュを自動で検出するなど、効率的な分析にも手を付けているという。

  • 分析にはビックデータを活用

    分析にはビックデータを活用

関和氏は「こういう原因だからこの対策がいいとかいうことをパターン化することで迅速な対応につなげている」と説明し、「今まで以上に、当たり前につながるネットワークを実現し、スマホの“イライラ”を街からなくしていきたい」と締めくくった。