三菱重工業は9月20日、水素を燃料とする水素ガスタービンの早期商用化に向けて高砂製作所で整備を進めてきた、水素の製造から発電までにわたる技術を一貫して検証できる「高砂水素パーク」の本格稼働を開始したことを発表した。

  • 三菱重工が本格稼働開始を発表した高砂水素パーク

    三菱重工が本格稼働開始を発表した高砂水素パーク(出所:三菱重工)

三菱重工は、2040年のカーボンニュートラル達成を掲げる「MISSION NET ZERO」に基づき、既存インフラの脱炭素化・水素エコシステムの実現・CO2エコシステムの実現の3つの取り組みを軸に、同社グループの成長エンジンであるエナジートランジションを推進している。そして今回はそのうちの水素エコシステム実現に向け、高砂水素パークの稼働に至ったとする。

同パークは、水素の製造・貯蔵・利用という3つの機能を持つエリアに分かれているとのこと。製造エリアには、世界最大級の水素製造能力(1100Nm3/h)を持つノルウェー・ハイドロジェンプロ製のアルカリ水電解装置を設置し、稼働を開始したとする。その後、同装置で製造した水素は、貯蔵エリアに設置した総容量3万9000Nm3の水素貯蔵設備に貯蔵するという。

  • ハイドロジェンプロ性のアルカリ水電解装置のスタック

    ハイドロジェンプロ性のアルカリ水電解装置のスタック(出所:三菱重工)

また水素燃焼の実機検証については、利用エリアの実証設備複合サイクル発電所に設置された大型JAC形ガスタービン(45万kWクラス)、および燃焼試験設備で圧縮機駆動用に設置された中小型H-25形ガスタービン(4万kWクラス)を使って行うとしている。

なお今回の発表は、高砂水素パーク内で水電解装置による水素の製造を開始したことによるもの。水素製造においては、自社技術により開発を進めている固体酸化物電界セル(SOEC)、アニオン交換膜水電解、メタンを水素と固体炭素に熱分解しCO2を出さずに水素を得る次世代ターコイズ水素製造技術など、新たな技術についても検証および実証を順次行うという。またこうした自社技術製品は、三菱重工が運用する技術開発拠点「長崎カーボンニュートラルパーク」で要素技術を開発したうえで、高砂水素パークにおいて商用化に向けた水素製造実証を行う計画だとする。

さらに今後は、次世代水素製造技術の導入を順次拡大するとともに、ガスタービン実機での水素混焼・専焼の実証を行うことで、製品信頼性の向上を図るとのこと。2023年内には、実証設備複合サイクル発電所のJAC形ガスタービンを利用して、実際の発電所と同じく電力網に接続された状態で、水素30%の混焼発電の検証を行うといい、2024年にはH-25形ガスタービンでの水素専焼実機実証を計画しているとした。

同社は高砂水素パークを活用しながら、水素製造・発電技術の開発および実機検証を加速し、信頼性の高い製品を通じて、世界の電力安定供給とカーボンニュートラル社会の早期実現に向けて貢献していくとしている。