本田技術研究所(Honda)と東レは9月19日、使用済み自動車(End-of-Life Vehicle、以下「ELV」)から回収したナイロン6樹脂の水平リサイクルに関する共同実証を開始したことを発表した。

近年は、日本国内においてもプラスチック資源循環法が施工されるなど、飲料容器や衣料品にとどまらず、廃棄プラスチックの再資源化に対する社会要請が高まっている。だが一方で、自動車におけるナイロン樹脂廃材の処理においては、分別回収やリサイクルの技術的難度の高さから、これまでは焼却の際に発生する熱エネルギーの回収・利用にとどまっていたという。

こうした中でHondaと東レは共同で、水の臨界点(374℃・22MPa)よりもやや低い領域の高温・高圧状態の「亜臨界水」を用いて、ナイロン6樹脂を分子状態に戻すモノマー化に成功したとする。なおナイロン6樹脂は、強度や耐熱性、耐薬品性に優れることから、熱にさらされガソリンやオイルなどに接することの多い自動車部品で、多く利用されている。

そして両社はこの新技術を活用した共同実証を開始。同実証では、日本国内でELVから回収したインテークマニホールドを再生原料とする水平リサイクルの実現に取り組むとのことだ。

新技術の特徴として、エンジニアリングプラスチックの原料となるモノマーを、再生材料から直接作り出すことが可能な点が挙げられる。また溶媒に水を用いるため、従来用いられてきた酸触媒に比べて環境負荷を低減できるうえで、約5分の1の時間で高効率な製造が可能になるとする。

そのため両社は、環境にやさしく、かつ短時間に高い収率で、バージン材と同程度の性能・品質を持つリサイクル材へと転換できる水平リサイクルのスキーム構築を目指すとしている。また、今回の新技術はナイロン樹脂以外のエンジニアリングプラスチック原料におけるモノマー化へも応用することが期待されるといい、今回の共同実証では、衣料やフィルムなどの自動車以外の用途も含め、広くサーキュラーエコノミーへの貢献効果についても検証するとのことだ。

  • Hondaと東レが構築を目指す水平リサイクルの技術実証スキーム

    Hondaと東レが構築を目指す水平リサイクルの技術実証スキーム(出所:Honda)

なお今回の実証は、環境省の脱炭素型循環経済システム構築促進事業の認定を受けており、樹脂処理量500t/年規模のパイロット設備の導入と実証を行い、2027年ごろの実用化を目指すという。

Hondaは、モビリティを進化させるために注力するキーファクターの1つとして“リソースサーキュレーション”を掲げており、今回のようなパートナーシップを通じて積極的にリサイクル資源を活用することで、環境負荷ゼロの実現を目指すとする。一方の東レは、「資源が持続可能な形で管理される世界」を2050年までに実現することを目指しており、今後も持続可能な循環型社会を実現するため、研究・技術開発を推進していくとしている。