BtoBマーケティングの一環でWebサイトを更新しているものの、成果につながっているのかは分からないという企業や担当者も多いのではないだろうか。「BtoBでもアクセスデータの解析は重要」だと語るのはHAPPY ANALYTICSの代表取締役 小川卓氏だ。

8月21日、22日に開催された「TECH+セミナー Marketing Days - 専門家とベンダーの対話~トップマーケターが語り合う BtoBマーケティング最前線~」に同氏が登壇。「BtoB企業が取るべきアクセスデータ解析戦略」と題し、アクセス解析ツール「Google アナリティクス 4(GA4)」の特徴とBtoBにおける活用法について話した。

アクセス解析ツールのスタンダード

小川氏は最初に、Google アナリティクスなどのアクセス解析ツールについて説明した。

アクセス解析ツールとは名称の通り、Webサイトのアクセスについてのデータを取得するためのツールだ。中でも、Google アナリティクスは無料で利用できることもあり、上場企業の約8割が使うなど、「日本でも世界でも最も利用されているアクセス解析ツール」だと同氏は話す。

GA4はその最新版(第4世代)として、2020年10月にリリースされた。2023年6月に第3世代にあたるユニバーサル アナリティクス(UA)のサポートが終了したことを受け、いよいよGA4の利活用が本格化している。

BtoBファネルにおけるアクセス解析ツール

BtoBの場合、売上創出までを示したファネルは、「集客」「興味」「コンタクト」「商談」「売上」という流れになる。

小川氏はこのファネルにおいて、GA4などのアクセス解析ツールは「集客」「興味」「コンタクト」の領域で活躍すると言う。

  • BtoBマーケティングのファネルと、アクセス解析ツールを用いる領域

アクセス解析ツールを使うことで、広告出稿などの施策が実際にどのぐらいの集客、興味、コンタクトにつながったのかを分析できる。分析することで、結果を確認し、改善に繋げていくことが可能になるのだ。

「何となくSNSを運用する、何となくコンテンツをつくる、事例を載せるのではなく、取り組みが上手くいっているのか、いないのかを数字にして見ることが必要です。アクセス解析をすることにより、自社のユーザーにとってどのような内容が良いのか、どこから集客すると成果につながるのかなどを発見できるでしょう」(小川氏)

ポイントは「数値で確認する」ことだ。数値での確認とは、定量的判断ができることを意味する。広告に費用をいくら使い、その結果何件の流入があったのか、何件の問い合わせがあったのか、問い合わせ1件あたりの価値はいくらかなどが明確になれば、効率と成功確率を上げることができる。

それを支援してくれるのが、「アクセス解析ツールと解析されたデータ」だと小川氏は強調した。

BtoBのWebサイトに必要な要素

ここから小川氏は、BtoBファネルの5つのステップのうち、2つ目の「興味」の部分にスポットを当てて、説明を続けた。

Webサイトを作成して時々更新していても、「本質的な部分を見落としているBtoB企業が多い」と同氏は指摘する。

BtoB企業のwebサイトに求められるのは、商品の良さだけではない。ユーザーの視点で考えた場合、ユーザーの課題や解決案が明示されていることが重要なのだ。

「BtoBのWebサイトに必要な要素は、自社だけの強み、信頼の醸成、そして事業内容の提示ではなく、解決案の提示という3つです。特に解決案の提示では、購入やサービスを通じて、その人や会社の生活がどう変わるかを示すことが必要になります」(小川氏)

ユーザーの行動を評価するためにGA4をどう使う?

では、作成したWebサイトの中でのユーザー行動を評価するために、GA4をどのように活用できるのか。小川氏はGA4の中で複数のレポートを駆使することが必要だと語り、例を挙げた。

まず、GA4の「集客レポート」は、流入元のデフォルトチャネルグループから、検索/ソーシャル/リスティング広告などから何人来たのか、何ページ閲覧したのか、どのぐらい成果につながったのかなどを確認できるもので、「レポート」メニューの中から「集客」を選択し、「トラフィック獲得」から見ることができる。

  • 集客レポートの画面サンプル

GA4になって新たに加わったのが、「エンゲージメント」だ。これまでは「直帰率」として、サイトに流入して最初のページを見て離脱した割合を出していた。この場合、5秒で離脱した人も、20分の動画を視聴してから離脱した人も同等にカウントされてしまう。そこで、エンゲージメントでは、セッション訪問時に「何秒以上滞在した」、「2つ以上のページを見た」などの条件をつけて測定できる機能が加わった。

BtoBはBtoCと違ってコンバージョンが起きにくく、評価が難しい。エンゲージメントを見ることで、「少なくとも興味関心を持ってくれたことが分かる。その人たちがどこから来ているのかなどを分析できる」と小川氏は説明した。

「閲覧レポート」は、各ページのビューを確認できるものだ。「エンゲージメント」から「ページとスクリーン」を選択すると利用できる。

小川氏は「(閲覧レポートは)当たり前のレポートではあるが、サイト改善をする上で重要なのは、多くの人が見ているページを改善していくこと」だと言う。その上で見るべきポイントは以下の3つである。

  • サイトへの流入に貢献しているのは何か
  • 回遊や閲覧につながっているのは何か(エンゲージメント時間とエンゲージメント率)
  • 成果につながっているのは何か、有料集客の場合は費用対効果に合っているのか

その他にも、コンバージョン数やコンバージョンしたUUを計測できる「コンバージョンレポート」や、ページ間の移動経路をトラッキングできる「経路データ探索レポート」もWebサイトの分析において有効なレポートだ。小川氏は「ユーザーの興味関心や、コンバージョンをしているか否かによっても動き方が変わってくる」と補足した。

アクセス解析とデータ連携でBtoBファネル全体をカバー

最後に小川氏は、GA4と他のデータ連携について説明した。

「集客」「興味」「コンタクト」「商談」「売上」というBtoBファネルのうち、GA4は最初の3つをカバーできるが、「商談」「売上」については、他のツールを使いながら実践していく必要がある。

Happy Analyticsでは、BtoBマーケティング自動化のツール「Pardot」を使って資料ダウンロードなどのフォームを作成、ユーザーの登録情報を入れ、ETLツール「Stitch」を通じて、「Google BigQuery」にデータを保存するように運用している。

これにより、サイトを訪問して問い合わせをした人について、プロフィール情報の他に、過去に何回サイトを訪問しているのか、どのぐらい滞在したのかなどのデータが分かるようになる。さらに、その先の商談に関する情報までデータ連携ができるという。

「営業がクロージングするのに前提情報が得られています。どのコンテンツが売上につながっているのかを可視化でき、その上で分析やターゲティングが可能になるのです」(小川氏)

小川氏はまとめとして、BtoBのアクセス解析においては「コンバージョンポイントの設定が大切」だと述べた上で、次のようなアドバイスを送った。

「ユーザーの興味関心を把握し、興味関心を持った上で成果につながっている人たちがどういうものを見ていたのか、つながらなかった人は何を見ていたのか、そこの差分で分析をしましょう」(小川氏)