ヴイエムウェアは9月5日、今年8月に行った年次イベント「VMware Explore」で行われた主要な発表に関する説明会を開催した。例年、同イベントでは同社の社運を賭けた大型発表が多く行われており、小誌でも既に報じている(参考:VMware、生成AI対応プラットフォーム発表 - NVIDIAと戦略的提携拡大、VMware、プライベートAIとエコシステムで企業の生成AI活用を支援)。
なお、イベントは時間に限りがあり、体系立てて説明するのは難しい。説明会では、既存のソリューションとの関連も踏まえる形で、主要な発表の紹介が行われた。
VMware Cloud関連の主要アップデート
VMware Cloud関連の主要アップデートについては、マーケティング本部チーフストラテジスト 本田豊氏が行った。本田氏は、VMware Cloudについて、「マルチクラウド環境に対し、単一で一貫性のあるプラットフォームを提供するものであり、VMware Cloud FoundationとVMware Cloud Servicesから構成されている」と説明した。
本田氏は、VMware Cloud関連のアップデートとして、VMware Cloud Editions、VMware Cloud マネージドサービスの拡張、vSAN Max、Ransomware Recovery、NSX+を挙げた。
VMware Cloud Editions
今回、Essentials、Standard、Pro、Advanced、Enterpriseと、5つのVMware Cloudエディションが発表された。クラウド変革の段階に合わせて、エディションを選択することができる。AdvancedとEnterpriseはフルスタックでVMware Cloudが提供される。
VMware Cloud マネージドサービスの拡張
VMware Cloud マネージドサービスについては、VMware Cloud on AWS、Equinix、IBM Cloudにおける拡張が発表された。
VMware Cloud on AWSにおいては、ネットワークセキュリティなど、セキュリティサービスが強化される。Equinix Metalにおいては、マネージドサービスが、また、IBM CloudではVMware Cloud Editions をベースにしたマネージドサービスが提供される。
vSAN Max
vSphereのストレージを拡張するソリューションとして、「vSAN Max」が発表された。同製品は、ペタバイト規模の分散ストレージを提供する。クラスタ当たり、最大8.6ペタバイトの容量、最大360万IOPSまで利用率を最大化できるという。
VMware vSAN Maxは、既存のVMware vSANエディションとは別のライセンスが適用され、テラバイト単位のサブスクリプションとしてVMwareの2024年度下期に提供される予定。
Ransomware Recovery
ランサムウェア攻撃からの迅速な復旧を実現するサービスとして、「VMware Ransomware Recovery」が発表された。同サービスは、クラウドベースの隔離されたリカバリ環境(IRE)内で電源が投入された仮想マシンの振る舞いを分析し、ファイルレス攻撃からリカバリできるように設計されている。
新機能として、複数の仮想マシンの同時リカバリ、クラウドでプロダクション仮想マシンの実行などが可能になった。
NSX+
昨年の「VMware Explore」で「Project NorthStar」(クラウド管理型サービス)として発表され、サービス化されたものが「NSX+」となる。本田氏は、「マルチクラウドを活用する上で、ネットワークとセキュリティの一貫性を確保することが課題となっており、それを解決するのがNSX+」と説明した。
「NSX+」は、一貫したネットワークとセキュリティの運用や一元化されたセキュリティ ポリシーの適用を実現し、NDR(Network Detection and Response)による多層防御を「as a Service」として提供する。
「VMware Tanzu」に関するアップデート
続いて、マーケティング本部チーフストラテジスト 渡辺隆氏が、アプリケーション・プラットフォーム「VMware Tanzu」に関するアップデートについて説明を行った。渡辺氏は、「VMware Tanzu」の方向性について、「プラットフォームエンジニアリング、コスト・性能・セキュリティを含めて最適化した上で、アプリケーションのデリバリを加速することにフォーカスしている」と述べた。
この方針を実現するソリューションとして、「Tanzu Application Platform」と「Tanzu Intelligence Services」「Tanzu Content Services」「Tanzu Hub」「Aria」が提供される。「Tanzu Hub」は「Aria Hub」がリブランドされたものだという。
渡辺氏は、「Tanzu」ブランドと「Aria」ブランドについて、「Tanzuはアプリケーションのライフサイクルをカバーするブランドであり、Ariaはクラウド構築者に向けて自動化と運用のためのソリューションを提供する」と説明した。
VMware Ariaは、VMware Cloudベースのインフラ環境向けのAria Automation製品ファミリーとAria Operations製品ファミリーを含む、クラウド管理ソリューションを引き続き提供する。
「Tanzu Intelligence Services」は今回発表された。同サービスは、ML/AIの機能により、クラウドにわたるアプリのコスト、パフォーマンス、セキュリティについて最適化を実現する。渡辺氏によると、同サービスにはVMware Ariaの製品群が含まれており、Tanzuとしてリブランドされたのだという。
デジタルワークスペース関連のアップデート
今回、VMware Cross-Cloud Servicesポートフォリオの一部であるVMware Anywhere Workspaceプラットフォームに最新のAIを統合することが発表された。
「Anywhere Workspace」は、従業員のデジタル体験(DEX)、仮想デスクトップインフラとアプリ(VDIおよびDaaS)、統合エンドポイント管理(UEM)、プラットフォームによって、自律型のワークスペースを強化する。
本田氏は、DEXに関しては、機能強化により、ヘルプデスクの効率を改善するとともに、従業員の生産性を最大化すると説明した。具体的には、分析機能であるInsightsが拡張されているほか、DEX Playbooks(ベータ)が追加されている。Playbooksは、IT部門がサポート部門のために作業指示書を作成するtがめのツール。
また、リモートやオフラインデバイスへのパッチ適用が難しいという課題の解決に向け、Workspace ONE UEMとIntel vProの統合が行われた。これにより、デバイスに電源が入っていなくても、オンにしてパッチを適用することが可能になるという。