IDDK、高砂電気工業、ユーグレナの3社は8月30日、宇宙空間向けの超小型細胞培養モジュールを共同開発したことを発表。2025年には同モジュールをElevationSpaceが展開する宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」に搭載し、低軌道に打ち上げ、微細藻類ユーグレナの培養実験に使用する予定であることを併せて発表した。
宇宙開発における食料源や酸素供給減として、微細藻類の可能性が期待されている。その探索に向けて現在もさまざまな研究が進められているが、限りある宇宙空間での実験に向けては、資材の軽量化や低容量化が求められる。
ElevationSpaceとユーグレナは、微細藻類ユーグレナの宇宙培養を目的とした覚書を2022年に締結。その後両社は、小型人工衛星に搭載する超小型細胞培養モジュールの開発を実現するため、顕微鏡に関する最先端技術を保有するIDDK、小型ポンプなどのパイオニアである高砂電気工業との共同開発を開始したとのことだ。
そして今回開発されたモジュールは、ElevationSpaceが2025年の打ち上げに向けて開発する無人小型衛星「ELS-R100」に搭載するため、衛星とのインタフェースに関わる点ではElevationSpaceから宇宙用機器開発に関わる知見の提供・構造設計支援を得ながら、ユーグレナが設計と制作を行ったとする。
また、培養状況を観察するIDDKのレンズレス顕微観察装置「MID」と、培地を供給するために必要となる高砂電気工業の超小型バルブおよびタンクユニットを搭載することで、総重量200kg以下という制約をクリアしたうえでの細胞培養の高度な制御を実現するとしている。
超小型細胞培養モジュールの仕様
- 寸法:103mm×57mm×27mm
- 重量:175g
今回開発された超小型細胞培養モジュールとElevationSpaceのELS-Rを活用することにより、これまで数千万円規模のコストを要していた宇宙空間での細胞実験を、数百万円程度で行えるようになる可能性がある。さらに、これまで難しいとされていた、衛星に搭載可能な遠隔・自動生物実験装置の実現およびその開発期間の短縮化が可能になったとする。
ElevationSpaceなどは、同モジュールが宇宙空間での微細藻類ユーグレナの成長や挙動の調査にとどまらず、医療分野などといった多岐にわたる研究分野での活用も期待できるとし、今後もさらなる共同研究を進め、宇宙開発に新たな1歩を踏み出していくとしている。