SIGNATEは8月24日、ChatGPTが日本経済に与えるインパクトを試算した検討結果を発表した。

今回の検討は、2023年3月23日にOpenAIとペンシルベニア大学から報告されたプレプリントに基づき、影響の判定基準を定義、職業への影響度を計算したもの。

同論文手法を再現したアルゴリズムを適用した結果が下図で、現状のChatGPT(alpha:一般的なChatGPT、つまりテキストのみを扱え、1年以内の最新の情報を持っておらず、検索による情報取得や他のアプリケーションとの連携はできない想定)から将来のChatGPT(zeta:機能面ではbetaと同じで、機能追加の評価を等価としたもの)までの影響度のポテンシャルを表現している。

例えば、beta(alphaに実装されていなかった機能が追加され、その機能の評価を半分としたもの)の影響度をみると、業務の10%にLLMを活用できる職業は全職業の70%強におよび、業務の50%にLLMを活用できる職業は全職業の20%という解釈となっている。

次に、LLM活用がもたらす業務効率化の価値を現状の日本の労働市場における給与実績から試算するため、国内の公的統計データから企業規模ごとの年間給与平均額を割り出し、経済効果(alpha・beta・zeta)算出に利用した。

結果としては、現状のLLM機能を活用した場合の影響度(alpha)で年間約25兆円、将来的な機能追加が実装されたLLM機能を活用した場合の影響度(zeta)で年間約40兆円相当の労働価値を生む試算となった。

最も影響を受ける職業分類は「事務従事者」で、34%の業務をLLMで効率化できるという。続いて、「専門的・技術的職業従事者」が26%の業務をLLMで効率化できるという試算となっている。

いずれもコンピュータを用いたデスクワークにおいてテキストを扱うことが多い職業で、この2つの職業分類は、就業者数および給与総額においても全職業分類の上位を占めており、LLMが大きな経済インパクトをもたらす可能性が示唆されているという。