東京農工大学(農工大)と東京農業大学(東農大)の両者は8月22日、日本の本州中部に生息するツキノワグマ(以下「クマ」)個体群の繁殖と死亡に関する情報のうち、初めて5つの情報(初育児成功年齢、育児成功間隔、自然死亡率、人為死亡率、0歳の子の死亡率)を定量的に明らかにしたことを発表した。
同成果は、農工大大学院 連合農学研究科の栃木香帆子大学院生、農工大大学院 グローバルイノベーション研究院の小池伸介教授(農工大 農学部付属野生動物管理教育センター兼任)、ノルウェー・ノード大学のSam Steyaert准教授(農工大大学院 グローバルイノベーション研究院 特任准教授兼任)、国立環境研究所の深澤圭太主任研究員、長野県 環境保全研究所の黒江美紗子研究員、群馬県立自然史博物館の姉崎智子主幹(学芸員)、東農大 地域環境科学部森林総合科学科の山﨑晃司教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、日本哺乳類学会が刊行する哺乳類に関する全般を扱う欧文学術誌「Mammal Study」に掲載された。
近年、日本の各地でクマの市街地への出没が増加し、人間社会との軋轢が問題になっている。クマの保全や管理の方針を決めていく上で、動物が生まれてから死ぬまでのさまざまなライフイベントを定量的に示す数値である「生活史パラメータ」の個体群レベルでの取得が必要不可欠だと考えられている。
しかし、クマの多くは本来森林に生息するため、直接観察することが難しく、繁殖に関する情報については断片的な報告があるのみだという。またクマは寿命が長く、特に死亡に関する情報を把握するには長い時間を要する。そのため、これまでクマの個体群単位の生活史パラメータについては解明されていなかった。
そこで研究チームは今回、日本の本州中部に生息するクマの越後・三国個体群に着目し、生活史パラメータを明らかにしたという。具体的には、5つの繁殖情報(初育児成功年齢、育児成功間隔、産子数、出産できる最低年齢と最高年齢)と、3つの死亡情報(自然死亡率、人為死亡率、0歳の子の死亡率)の推定が行われた。