ソフトバンクグループ(SBG)が8月8日に発表した2023年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が4776億円の赤字だった。前年同期から2兆6851億円改善したものの、3四半期連続の赤字となった。保有するドル建ての負債が円で見た場合に膨らむ円安の影響を受け、為替差損として4646億円を計上した。

  • 四半期ごとの純利益 資料:ソフトバンクグループ

    四半期ごとの純利益 資料:ソフトバンクグループ

一方、AI(人工知能)関連の新興企業に投資するソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)事業は6四半期ぶりに黒字化し、税引き前利益が610億円(前年同期は2兆3307億円の赤字)だった。同社は2022年度は守りの姿勢を続けてきたが、少しずつ攻めの姿勢も見せつつある。SVFを含めた全体の投資額は2023年4〜6月期は18億ドル(約2600億)と、それまでの3四半期が5億ドルほどであったのに対し増加傾向にある。

  • 投資額の推移 資料:ソフトバンクグループ

    投資額の推移 資料:ソフトバンクグループ

「昨年度の投資は事実上ストップしていた。少しだけギアをあげ、恐る恐る投資を再開している。アクセルとブレーキの調整に気を付けながら、慎重かつ大胆に事業を進めていきたい」と、同日夕方に開かれた決算発表会に登壇した最高財務責任者(CFO)の後藤芳光氏は説明した。

  • ソフトバンクグループ CFO 後藤芳光氏

    ソフトバンクグループ CFO 後藤芳光氏

同社はかねてより「NAV(時価純資産)」「LTV(負債カバー率)」「手元流動性」の3つを最重要指標として位置付けている。中国アリババ集団株といった保有資産の売却など盤石な財務を続けた結果、NAVは3月末の14兆1000億円から6月末で15兆5000億円へと増加。また、LTVはこの3カ月間で3%低下し過去最低となった。さらに、手元流動性は5兆8000億円まで増えており、「6年分の社債償還資金を保持できている」(後藤氏)という。

「『ソフトバンクディスカウント』と揶揄される1株当たりNAVと株価との差に関しても、その幅は徐々に縮まっている。また、通常時でもLTV25%未満という自社基準を優にクリアしており、経営はかなり安定している。テクニカルな努力を続け安全運転を継続していく」(後藤氏)

  • 重要指標の変動 資料:ソフトバンクグループ

    重要指標の変動 資料:ソフトバンクグループ

注目を集めるのは、傘下の英半導体設計大手Arm(アーム)の新規株式公開(IPO)に関するトピックだ。同社の2023年4~6月期の売上高は6億4100万ドルで、昨今の生成AIブームを受け同社の株価は上昇している。

IPOに関する報道陣からの質疑に対して後藤氏は「上場直前で何も言えない。一つだけ言えることは、みなさんのもとに情報が入るのがそう遠くはないタイミングということだ」と答えた。

  • Armの売上高 資料:ソフトバンクグループ

    Armの売上高 資料:ソフトバンクグループ

同社のIPOに関しては、9月に米ナスダック市場に上場する方針だと日本経済新聞が8日に報じた。上場と同時に米Appleや韓国サムスン電子など複数の事業会社がArmに投資するという。上場時の時価総額は600億ドル(約8兆6000億円)超が見込まれており、2023年で世界最大のIPO案件になりそうとのこと。なお、現時点でSBGとArmからは正式な発表は出されていない。