岐阜大学は7月27日、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が多く含まれている硬水を噴霧化処理することで、硬水中のカルシウムイオン(Ca2+)濃度と電気伝導度が減少することを発見したと発表した。

同成果は、同大教育学部家政教育講座の久保和弘 教授とTKSの山下貴敏 商品企画開発部 課長らによるもの。詳細は、2023年7月27日付で食品科学工学の国際誌「Food Science and Technology Research」(オンライン版)に早期公開された

WHO(世界保健機関)の分類によると、CaCO3の濃度が60mg/L未満が「軟水」、60-120mg/Lが「中硬水」、120-180mg/Lが「硬水」、180mg/L以上が「超硬水」とされており、ミネラル分の多い硬水の日常的な使用は、カルシウムの過剰摂取による前立腺がんの発症リスク増加や、配管内での無機沈殿物の増加などが知られている一方、硬度がCaCO3の濃度が100mg/L未満の場合は配管の腐食が起こるといったことも知られており、世界に点在する硬水地域では、水の軟化処理が行われているという。しかし、既存の軟化技術では、さまざまな手間や専門性が必要であり、より簡便な処理方法の実用化が求められているという。

今回、研究チームでは、硬水の気液界面積を極大化することで、硬水中の過飽和二酸化炭素(CO2)を揮発させ、CaCO3の沈殿を促進することで、水の軟化が実現できるのではないかという仮説を立て、実験を実施。その結果、噴霧化処理によって、硬水中のCa2+濃度と電気導電度が減少することを確認したという。

  • 今回の実験で用いられた硬水の噴霧化処理の模式図

    今回の実験で用いられた硬水の噴霧化処理の模式図 (出所:岐阜大学)

具体的には、3つの濃度の合成硬水ならびにフランス産の一般に流通している硬水(Evian)を用いて、それぞれの硬水200mLを圧力1MPaの条件で噴霧化ノズルを用いて、ビーカー内に霧として噴霧。硬水は一般的にCO2が過剰に溶解した状態とされるが、噴霧化処理直後に硬水は微粒子化され、多量のマイクロバブル(MBs)を生成。それによる気液界面積の拡大と同時に、1MPaから大気圧(約0.1MPa)までの減圧が瞬時に起こることが確認され、この急転が飽和したCO2ガスの脱気を促進したと研究チームでは見解を示すほか、急激な減圧がキャビテーションを引き起こされたが、その際にMBsが過飽和状態のCO2ガスの一部から生成、浮力によって表面へ運ばれて液体表面から急速に気相に放出されたことで、硬水の気液界面積拡大と相まり、軟化現象の初期にCa2+濃度の急激な減少を引き起こしたものと推察されるとしている。

なお、研究チームでは、今回開発された軟化技術で得られる水のCa2+濃度は、2018年12月にEU加盟国が公表した飲用水道水中のCaおよび他のミネラルの濃度に関するガイドラインの推奨範囲にほぼ相当するものであり、また硬水を容易に、適切な硬度に軟化できるため、高い汎用性を持つと考えられると説明しており、今後、この技術を応用した製品の開発を進めていく予定としている。