愛媛大学は7月12日、初期地球では現在と比較して三価鉄(Fe3+)に富むとても酸化的なマグマの海とそこから固化したマントルが形成されたことが示され、初期地球の大気が現在の金星大気のように非常に酸化的であり、おそらく二酸化炭素(CO2)と二酸化硫黄(SO2)に富んでいたことを示唆していると発表した。

同成果は、愛媛大 地球深部ダイナミクス研究センターの桑原秀治助教らの研究チームによるもの。詳細は、地球惑星科学全般を扱う学術誌「Earth and Planetary Science Letters」に掲載された。

惑星内部と表層の結びつきは、惑星表層環境の形成過程を理解する上で重要な鍵とされている。岩石惑星である地球のマントルにおける二価鉄(Fe2+)およびFe3+の分布は、マントルの酸化状態を制御し、火山ガス組成に影響を与え、さらには水素や炭素などの生命必須元素を含む揮発元素のマントル貯蔵量にも影響を与えているとする。つまり、形成直後のマントルにおけるFe2+とFe3+の分布を解明することは、生命の誕生と進化を育む地球を理解する上で重要な知見を提供するという。

約46億年前、核融合が始まって輝き出したばかりの原始太陽の周囲の原始惑星系円盤内において、地球が形成されていったと考えられている。最初はμmサイズだった塵が、いつしか微惑星、そして原始惑星へと成長し、最後には地球が形成されたが、その形成直後の地球表面は、全面が溶解した「マグマオーシャン」だったと考えられている。

桑原助教が行ったこれまでの研究から、マグマオーシャンは現在の上部マントルよりもFe3+に富んでおり、非常に酸化的だったことがわかっている。ただし、この場合の上部マントルの酸化状態が、どのようにして現在の状態にまで変化したのかは不明だ。その疑問に答えるため、研究チームは今回、マグマオーシャンが結晶化する際に起こる、鉱物-マグマ間のFe2+とFe3+の分配反応を高圧実験によって調べたという。

  • 高圧実験回収試料の断面組織。

    高圧実験回収試料の断面組織。(出所:愛媛大プレスリリースPDF)

実験の結果、下部マントルで最も豊富な鉱物である「ブリッジマナイト」は、共存するマグマと比較してFe3+を優先的に取り込まないことが判明。このことは、地球のマグマオーシャンがFe3+に富んでいた場合、初期地球の上部マントルも非常に酸化的だったことを意味するという。またこのような酸化的なマントルから供給される気体から形成する大気は、CO2やSO2に富み、現在の金星のような地表環境を形成していたことが考えられるとしている。

マグマオーシャンの結晶化過程では、上部マントルの酸化状態を下げることができないことから、研究チームは今回、地球形成後に降着する天体に含まれる金属鉄によって上部マントルが還元されたとする仮説を提案した。

実際、研究チームでは地球上部マントルに含まれる親鉄性元素(これらの元素は、大半が地球形成過程で金属核に取り込まれると考えられる)の過剰量から推定されている、地球形成後に降着した天体が供給する金属鉄量が、現在の上部マントルの酸化状態を説明するのに必要な金属鉄量と同程度であることを示したとしており、この仮説を検証するためには、初期地球のマントル酸化状態に関するさらなる地質学的制約が必要としている。