三井物産は、大阪大学発ベンチャー企業のマイクロ波化学(MWCC)と、リチウム鉱石の製錬工程での課題になっている脱炭素化を図る手段として「マイクロ波を利用して低炭素化技術を実現するリチウム鉱石の製錬技術を共同開発する契約を締結した」と、6月27日に公表した。

三井物産は海外のさまざまな金属資源の鉱山をグローバルに開発・提携・運営している中で、リチウムイオン二次電池の事業化に欠かせないリチウム系資源を確保するために、採掘できる“リチウム資源”の“鉱山”での事業化を国際的に進めてきた。こうした中で、リチウム精錬時の煆焼(かしょう)プロセスでの低炭素化を実現する課題が急浮上してきた。

このリチウム鉱石製錬技術での低炭素化を図るために、マイクロ波利用の事業化を進めているマイクロ波化学と共同開発契約を締結したことが公表された。

大阪大学発ベンチャー企業のマイクロ波化学は、電子レンジなどでの加熱源であるマイクロ波を、主に化学プロセスに適用する工業化技術の事業化で、日欧米の化学メーカーなどと共同開発契約を増やしてきた。例えば、太陽化学と食品添加物のショ糖脂肪酸エステルの合成法などの共同開発や、三菱ケミカルとアクリル樹脂のケミカルリサイクル技術開発の共同開発を実施し、新しい化学反応工程などの実現する成果を上げてきた。従来の化学反応工程では難しい課題を解決する工程に、マイクロ波を利用する新しい手法で成果を上げてきた。

今回は「リチウム鉱石錬術の煆焼プロセスでの化石燃料を用いた加熱を、マイクロ波利用の新工程によって、低炭素化を2026年までに目指す共同開発契約だ」を説明する。

リチウム鉱石の採掘は、一般的な鉱山形態に加えて、リチウムが大量に溶け込んだ湖からの資源採掘形態など、その“鉱山”形態も多様であり、低炭素化技術はかなりの多様な工夫が必要になると推定されている。

注:リチウムが大量に溶け込んだ湖の例としては、南米のボリビアとチリの国境近くにあるウユニ塩湖が有名。こうしたリチウムが大量に溶け込んだ塩湖からのリチウム資源の回収では、加熱に大量のエネルギーが不可欠となり、この工程における低炭素化が大きな課題になっている。また従来のリチウム鉱山でも、最初に鉱石内のリチウム成分と大まかに分離する工程での加熱でも、低炭素化が大きな課題になっている。

  • 南米ボリビアのウユニ塩湖

    南米ボリビアのウユニ塩湖は世界の全埋蔵量の約50%のリチウムが眠るとも言われているリチウム鉱床である