ジオテクノロジーズは6月16日、経営戦略発表会を開催した。同社はデジタル地図の制作・販売を主事業としていたパイオニアの子会社(旧インクリメントP)が、2021年6月に独立して誕生した企業となる。
現在はカーナビゲーション向けの地図データベースなどを提供するオートモーティブビジネス、地図ポータルサイト「MapFan」などの地図関連サービスを提供するGIS(Geographic Information System)ビジネス、コンシューマーやビジネス向けのアプリを提供するアプリケーションビジネスを展開する。
発表会では、同社が新たに提供を開始するデジタル地図・位置情報・人流データの統合分析プラットフォーム「Geo-Prediction Platform(GPP)」の詳細と、同サービスを用いた今後の事業展開などが紹介された。
ビッグデータを統合して産業の未来予測に生かす
GPPはジオテクノロジーズが保有するデジタル地図・位置情報・人流データのほか、同社が提供するコンシューマー向けアプリから得られるリサーチ結果などのマーケティングデータを連携して分析できるクラウドサービスとなる。同サービスはサブスクリプションモデルで提供される予定だ。外部の企業が保有するデータをAPI連携することも可能で、生成AIとの連携も可能だという。
ジオテクノロジーズ 代表取締役社長 CEOの杉原博茂氏は、「業種・業態によってさまざまなデータがあるので、GPPに関心を抱いていただいた企業と対話しながら、データの扱い方や他のシステムとのAPI接続など具体的な利用方法を探索しつつ、サービスを展開していく。また、既存のパートナー企業のサービスやシステムとも繋げて、新たなソリューション開発も行う」と同サービスの事業計画を説明した。
同社では40億枚の画像データや 8億アイテム以上の地図構成データ、4200万件以上の住所データ、移動距離に応じてマイルが貯まるポイ活アプリ「トリマ」から得られる10億以上の人流移動ログデータなどのビッグデータを保有している。そうしたデータは、これまで既存サービスを通じて、もしくは顧客の要望に応じて個別に提供されてきた。
パイオニアから独立して2年が経つ中で、BtoC領域に活用できる人流データが十分に蓄積されたことに加え、既存のデータを展開していくための戦略やマーケット環境が整ったことから同社は今回、同サービスを立ち上げたという。
「GPPは当社としても初めての試みとなる。『未来予測をできるか?』という問いに、データで応えるのが当社の使命だ。当社のデータを組み合わせることによって災害、渋滞、集客、危険度の予測などに活用できると考える。まずは、デジタル地図・位置情報・人流データをさまざまな産業の未来予測に生かす、そのためのマーケットを作っていきたい」と杉原氏は語った。
建設、不動産企業と実証実験を開始
ジオテクノロジーズは、同プラットフォームを外部に提供するだけでなく、自社の既存サービスと組み合わせた活用も検討しているという。
「例えば、自動車業界にとって当社はカーナビの地図データを提供する会社という位置づけだった。だが、すでに提供しているサービスにGPPを掛け合わせることで、これまで実績のない領域でもビジネスを創出できると考える」(杉原氏)
一部の企業とは、すでにGPPを通じたデータ活用の実証実験が進んでいるそうだ。大手建設会社とは、地図データやビル名データ、避難所データなどを活用し、保有されている不動産物件のリニューアル検討のシミュレーションに同サービスが活用されているという。また、大手不動産物件紹介事業者とは、住宅を選ぶ際の参考情報として街の未来を予測・紹介するサービスで利用されているとのことだ。
同社は今後、スマートシティ、地方・観光、学校・教育、物流、MaaS(Mobility as a Service)、ショップ・レストラン、ヘルスケアなど複数分野でのサービス展開を想定している。
同社が提供するトリマでは、位置情報と人流データログに基づいて、約630万人のモニターの中から場所・時間・属性情報が紐づいたアンケートを実施できる。例えば、そのアンケート情報と、ある場所への来訪歴、特定期間の行動などをPPPで分析して新しいマーケティング施策を策定するといったデータ活用も可能だという。
杉原氏は、「2022年7月にはトリマの海外展開をスタートした。これによって、データを活用した取り組みを海外で検討している企業のニーズにも応えることができるだろう。これまで接点のなかった企業とも協業し、新しい価値を生み出していきたい」と意気込んだ。