韓国航空宇宙研究院(KARI)は2023年5月25日、国産ロケット「ヌリ号」3号機の打ち上げに成功した。

ヌリ号は昨年、2号機で初の打ち上げ成功を収め、今回は初の実用衛星を搭載しての打ち上げだった。また、将来の運用の移管を見据え、打ち上げの準備段階から、民間企業のハンファ・エアロスペースが主体的に参加した。

  • ヌリ号3号機の打ち上げの様子

    ヌリ号3号機の打ち上げの様子 (C) KARI

ヌリ号3号機の打ち上げ

ヌリ号(KSLV-II)の3号機は、日本時間5月25日18時24分(韓国時間同じ)、南西部・全羅南道の羅老宇宙センターから離昇した。

ロケットは1段目の飛行やフェアリングの分離、2段目、3段目の飛行を順調にこなし、離昇から約13分後に、搭載していた主衛星の「次世代小型衛星2号」を分離し、所定の軌道に投入した。

その後、相乗りで搭載していた7基のキューブサット(超小型衛星)も、次々と分離され、軌道に投入された。ただ、そのうち1機の「トヨサット3号」については、分離が確認できていないとしている。

打ち上げは当初5月24日に予定されていたが、発射制御コンピューターと発射台制御コンピューターとの間の通信異常により、1日遅れた。

打ち上げ成功を受け、イ・ジョンホ科学情報通信部長官は会見で、「ヌリ号は昨年の打ち上げ成功に続き、今回も打ち上げ成功を収めたことで、韓国の宇宙輸送における自立性と、韓国の宇宙開発能力をたしかなものにしました」と述べた。

ユン・ソクヨル大統領は「自国で開発したロケットで、自国の衛星を軌道に乗せることができるのは世界でも限られた国だけです。そこに我が国が参入できたことは本当に驚くべきことです。宇宙開発はあらゆる分野で主導的な役割を果たしており、韓国の最先端技術に対する世界の認識は大きく変わることでしょう」と、成功を称えた。

ヌリ号3号機と次世代小型衛星2号

ヌリ号はKARIが開発した韓国の国産ロケットで、機体の全長は47.2m、最大直径は3.5m。高度600~800kmの地球低軌道に約1.5tの打ち上げ能力をもち、小型~中型ロケットに分類される。

ロケットは3段式で、1段目に新開発の推力75tf級の大型エンジンを4基束ねて装着。第2段には同じ推力75tf級エンジンを、真空用の大きなノズルに改修したものを1基装着している。第3段には、推力7tf級の小型エンジンを装備する。75tf級エンジンも7tf級エンジンも、推進剤にケロシンと液体酸素を使い、エンジン・サイクル(動かす仕組み)にはガス・ジェネレイター・サイクルを採用している。

ヌリ号の開発は2010年3月から始まり、エンジン開発などで難航しつつも、2021年10月21日に初打ち上げを迎えた。しかし、第3段の燃焼が計画より早期に止まったことで失敗に終わった。その後、改修を経て、2022年6月21日に2号機の打ち上げを行い、初めて成功を収めた。

2号機では、ロケットの性能確認用のダミー(模擬)衛星を搭載して打ち上げたが、今回の3号機は初めて実用衛星を搭載しての打ち上げだった。

また、KARIでは将来的に、ヌリ号の運用を民間企業のハンファ・エアロスペースに移管することを計画しており、今回の3号機では打ち上げ準備の段階から、KARIと同社が共同で作業を行ったという。次の4回目の打ち上げでは、ロケットの製造段階から同社が主体的に参加する予定となっている。

  • 打ち上げを待つヌリ号3号機

    打ち上げを待つヌリ号3号機 (C) KARI

次世代小型衛星2号は韓国科学技術院(KAIST)が開発した、質量180kgの小型衛星で、Xバンドの合成開口レーダーの技術実証のほか、宇宙放射線の計測などを行うことを目的としている。高度約550kmの太陽同期軌道の一種のドーン・ダスク軌道で運用され、設計寿命は2年が予定されている。

打ち上げ後、地上局との交信やレーダーのアンテナの展開、衛星の姿勢制御の機能確認などを完了し、本格的な運用に向けた準備が正常に進行中だという。

このほか、相乗り機会を利用し、次の7機のキューブサットが搭載されていた。

JAC

  • 開発企業: ジャーステック
  • ミッション: 地球観測用光学センサーや姿勢制御システムの宇宙実証
  • サイズ/質量: 3U / 4kg

ルミールT1(Lumir-T1)

  • 開発企業: ルミール
  • ミッション: 宇宙放射線の測定、宇宙放射線によるマイクロプロセッサーのエラーの補正技術の実証
  • サイズ/質量: 6U / 10kg

KSAT3U

  • 開発企業: カイロ・スペース(Cairo Space)
  • ミッション: 地表面偏光観測による気象現象観測、宇宙ごみ除去技術実証
  • サイズ/質量: 3U / 6kg

トヨサット(SNIPE) x 4機

  • 開発機関: 韓国天文研究院
  • ミッション: 地球・宇宙空間プラズマ微細構造の時空間変化の同時観測
  • サイズ/質量: 6U / 10 kg (1機あたり)
  • 打ち上げ準備中の次世代小型衛星2号

    打ち上げ準備中の次世代小型衛星2号 (C) KARI

KARIは今後、2025年にヌリ号の4号機、2026年には5号機、そして2027年に6号機の打ち上げを計画している。

また、KARIは次世代の大型ロケットの開発も進めている。この次世代ロケットは、二段燃焼サイクルのロケットエンジンを装備した2段式ロケットで、現在はロケットエンジンの試験が続いている。

同ロケットは大型の衛星や、静止衛星、月探査機などの打ち上げに使うことが想定されており、2030年代には月着陸機の打ち上げが計画されている。また、再使用型ロケットへの発展構想もある。

参考文献

https://www.kari.re.kr/cop/bbs/BBSMSTR000000000011/selectBoardArticle.do?nttId=8766&kind=&mno=sitemap02&pageIndex=1&searchCnd=&searchWrd=
eng.president.go.kr/briefing/NTbB9FZS
https://www.kari.re.kr/nuri/sub02_01.do
https://www.kari.re.kr/kor/sub030401.do