乳酸菌「L.ラクティス プラズマ(プラズマ乳酸菌)」を大量に摂取することで軽症の新型コロナウイルス患者のウイルス量を早期に減らし、嗅覚や味覚障害を緩和できる可能性があることを、長崎大学のグループが明らかにした。新型コロナ感染症の新たな予防や治療法につながることを期待している。

L.ラクティス プラズマはキリンホールディングスが2010年に発見した乳酸菌で、免疫の指令を司るプラズマサイトイド樹状細胞を増やして、感染症を防ぐ役割を果たすことが分かっている。長崎大学病院呼吸器内科の山本和子客員教授(微生物学、免疫学)は乳酸菌と免疫力の関係性から、大量にプラズマ乳酸菌を摂取した場合、新型コロナウイルスの軽症患者にはどのような影響が出るかを調べた。

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    L.ラクティス プラズマ(プラズマ乳酸菌)の様子(キリンホールディングス提供)

2022年1月から3月に、長崎大学病院をはじめ長崎市内の7病院で新型コロナウイルス軽症と診断された20代から60代の男女100人を選んだ。その際にワクチン接種や基礎疾患の有無、高齢などを考慮し、重症化リスクがある人は調査対象から外した。

最終的にプラズマ乳酸菌4000億個分のカプセルを飲む群50人、飲まないプラセボ群46人の計96人が参加。ホテル療養中は採血検査やPCR検査といった医療行為を行い、自宅に帰ってからはカプセルの内服や専用アプリで自覚症状を記録。ウイルス量や味覚・嗅覚異常といった症状の変化を14日間にわたって追跡調査した。

この間、乳酸菌カプセル摂取群にはじんましんや下痢といった副作用が見られる人もいたが、全員が快方に向かい、重症化した人はいなかったという。

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    研究は対象者に医療行為を一括で行えるホテル療養の環境下で行われた(キリンホールディングス提供)

調査の結果、咳や食欲不振、だるさといった自覚症状の総合スコアではプラズマ乳酸菌の摂取群と非摂取群との間に差異はみられなかった。一方、自覚症状のうち嗅覚や味覚の異常について、「症状がなくなった」と答えた人の割合が発症7日目以降に摂取群88%と非摂取群(85%)を上回りはじめ、9日目には摂取群94%、非摂取群82%と10ポイント以上の開きが出た。

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    嗅覚や味覚の障害というコロナウイルス特有の症状は、摂取群で早く消失が見られた(キリンホールディングス提供)

鼻拭い方式のPCR検査で体内のコロナウイルス量を調べたところ、4日目にプラズマ乳酸菌摂取群でウイルスの有意な減少が見られた。ウイルスが生理的に排出され、検出されなくなる8日目では非摂取群との違いは見られなくなるが、摂取により早期にウイルス減少のスピードが速まることが確認されたという。採血検査で非摂取群はプラズマサイトイド樹状細胞の血中濃度が大幅に減少した一方、摂取群は維持されていることも分かった。

これらの結果から、プラズマ乳酸菌の摂取が新型コロナウイルスの早期減少、嗅覚や味覚障害からの早期回復につながっている可能性が示唆されるという。

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    ウイルスの減少のスピードは、摂取群の方がやや速かった(キリンホールディングス提供)

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    免疫の指令を司る細胞の血液中の濃度は摂取群で維持された(キリンホールディングス提供)

プラズマ乳酸菌は機能性表示食品として市販の製品にも含まれている。ただ、市販品は今回の実験と菌の含有量が異なるため、プラズマ乳酸菌入りの製品をたくさんとれば同様の結果がでるとは断定できない。

山本教授は「今回の実験は軽症患者をホテル療養という特殊な医療環境下に留め置くことができたからこそ実験が可能だったが、今後は現実的にどのような実験ができるか考えたい」という。

研究はキリンホールディングスからの受託研究で行われた。成果は英国の医学雑誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」2022年9月号に掲載され、長崎大学が4月28日に発表した。

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