データ分析基盤を提供する米Databricksの日本法人であるデータブリックス・ジャパン(データブリックス)は5月25日、戦略発表会を開き、2023年度の事業戦略を発表した。同社が目指す「データとAIの民主化」の実現に向けた戦略や、国内の従業員数を倍増する計画などを明らかにした。

「製品開発や従業員の生産性向上にはデータの活用が不可欠で、データはすべての根源になっている。データとチームが異なるシステムに分断されている『データサイロ』である企業から、データとAIをフル活用して顧客や製品に関する意思決定を行う『データフォワード』である企業に変革することが求められている」と、代表取締役社長の笹俊文氏は説明した。

  • データブリックス・ジャパン 代表取締役社長 笹俊文氏

    データブリックス・ジャパン 代表取締役社長 笹俊文氏

データレイク×データウェアハウス=次世代データ基盤

同社はSaaS型の統合データ分析基盤「レイクハウス・プラットフォーム」を提供している。「レイクハウス」とは、さまざまなソースから収集したデータを一元管理で貯めておけるリポジトリ「データレイク」と、さまざまなシステムからデータを集めて整理するデータの倉庫「DWH(データウェアハウス)」を掛け合わせた造語だ。

同プラットフォームは、データの統合から分析、AI(人工知能)の活用までを一貫して行える点が特徴だ。笹氏は、「電話や時計、カメラ、GPSが一体となったスマートフォンのように、BI(ビジネスインテリジェンス)やリアルタイムデータ処理、データ編集・加工といった機能が一体化した次世代型のデータ基盤だ」と、同社のプラットフォームのアドバンテージを強調した。

  • レイクハウスプラットフォームの概略図

    レイクハウスプラットフォームの概略図

続けて、「この次世代データ基盤は、高い費用対効果と拡張性、オープンアーキテクチャ、リアルタイム分析、人工知能&機械学習といった5つの競争優位性をもっている」と補足。

中核技術となる「Delta Lake(デルタレイク)」はオープンソースのストレージレイヤーで、「AWS S3」や、「Azure Data Lake Storage」、「HDFS」などの既存のデータレイクファイルストレージ上に構築できる。「ログやテキスト、音声、動画、画像といったすべての生データをそのまま既存のクラウドで活用できる。コピーする手間が省ける」(笹氏)とのことだ。

  • 「レイクハウス」は次世代データ基盤だという

    「レイクハウス」は次世代データ基盤だという

2023年中に国内の従業員数を倍増へ

国内では、AGCや、カケハシ、東京海上日動火災保険、ソフトバンク、日本経済新聞社、リクルート、カルビー、マネーフォワード、田辺三菱製薬、オムロンヘルスケアといった、業界の大手企業が同プラットフォームを導入している。グローバルに目を向けると導入企業数は9000社を超えている。

そしてデータブリックスは、日本でのデータレイクハウス導入が好調であることを受け、技術の専門家や営業職、サポートエンジニアなどを中心に、2023年中に国内の従業員を、倍増となる100人以上の体制にする計画を明らかにした。事業成長の支援と顧客成功の促進を加速していく考えだ。

国内の人員増強に加えて、レイクハウスの市場認知の向上、経営層へのソートリーダーシップ活動の加速、ユーザーコミュニティーの拡大、パートナーエコシステムの強化、業界特化型ソリューションの拡充などに集中する。

  • データブリックス 2023年度の事業方針

    データブリックス 2023年度の事業方針

「新たな収益化戦略を生み出すためにデータを活用する必要がある。2023年は、多くの組織がデータのサイロ化を解消し、次世代AIの可能性を最大限に引き出すことができる単一の統合データアーキテクチャへの移行を決断する、重要な年になるだろう。データとAIの民主化を進めていきたい」(笹氏)